ハル・ハートリー クラウドファンディング始めたってよ!
アメリカ・インディペンデント映画を代表する監督ハル・ハートリーが、「ヘンリー・フール」のDVD-BOX製作の為クラウドファンディングで出資を募り始めました。今回収録される、「ヘンリー・フール(Henry Fool)」「フェイ・グリム(Fay Grim)」「ネッド・ライフル(Ned Rifle)」はいずれもDVD化されていません。また、今回のDVD-BOX企画は、日本好きのハル・ハートリー監督の配慮により、「日本から100ドル以上出資があった際、日本語字幕をつける」という条件を提示してきました。
(Kickstarter Gold: HENRY FOOL Trilogy Boxed-Set ※クラウドファンディングの詳細はコチラ
)
詳しくは上記のリンク(英語が苦手な人はブログサイト「ムラヤマの雑記」に日本語での説明があります
)で確認して頂きたいのですが、100ドル(約1万2000円)でDVD-BOXとCDが、115ドル(約1万4000円)でブルーレイボックスとCDが送料無料で11月頃送られてきます。
こう宣伝しておきながら、実はブンブン、この企画を知るまで、ハル・ハートリーの作品を1本も観ていませんでした。ということで、早速TSUTAYAに行ってきて、「シンプルメン」と「愛・アマチュア」を借りてきました。今日は、「シンプルメン」について紹介します。
もくじ
シンプルメン(1992)
SIMPLE MEN(1992)
監督:ハル・ハートリー
出演:ロバート・ジョン・バーク、
ビル・セイジ、
エリナ・レーヴェンソンetc
評価:80点
「シンプルメン」あらすじ
国防省爆破事件の犯人として逮捕された元野球選手の父を持つ兄弟ビルとデニス。ビルは強盗をするが、仲間に金を奪われてしまう。デニスは勤勉な学生。そんな二人は、父親刑務所脱走の話を聞き、ロングアイランドに、父親を探しに行くのだが…
「はなればなれに」の華麗なるアレンジ
ドープな音楽に、大きく「SIMPLE MEN」と映し出される。すると、いきなり女性がガードマンに銃を向け、DON’T MOVEと叫ぶカッコイイシーンが観客になだれ込む。この時点でブンブンは確信しました。「シンプルマン」は傑作であると。強盗という緊迫したシーンから始まっているのに、どうも台詞がおかしい。「動いたわ!動かないで!」と女性はわめく。ガードマンは恐怖で震えているだけなのに、、、無害なのに。しかも、強盗同士の小競り合いに、ガードマンがノリノリで参加してくるではないか。
そんな茶番から始まる本作は、陰鬱な内容にも関わらず軽やかに画面を駆け抜けていきます。刑務所を脱走した父親探しにロングアイランドまで向かう兄弟だが、兄は警察や元恋人への復讐を企んでいる。地元での、父の噂にうんざりしている兄は憎悪をため込んでいるのです。
そんなシリアスな展開なんだけれども、謎の女が登場したことで負のベクトルがなかったことにされます。おかっぱの魔性の女は、兄弟を魅了し、レストランで一緒にダンスを踊ったりする。本能的に動く彼女に兄弟はタジタジ。その姿に観客は癒やされます。
「シンプルメン」の意味は?
ハートリー監督はタイトルの意味について、インタビューで次のように語っています。
題名としては、やはり二人の兄弟のことです。ビルとデニスがケイトやエリナに出会って自分を発見していく。「シンプルメン」は複雑な女性たちについての映画だと思ってもらっていいのです。タイトルのわりに女性の比重が大きいのですから。
女を憎まなきゃとムキになっている兄。まだ出会ったことのない父と出会って父の人生の真実を知らなければ自分の存在もないと思い込んでいる弟。善悪の決着のつかない正義に殉じている父。そして、ウソをつくことを拒否する女。そうした生き方の問題を含むロマンス映画です。(Chanter パンフレット 1992年12月12日発行より引用)
つまり「シンプルメン」は、女性の複雑な心の揺らぎと単純な心で突き進む兄弟という関係を端的に表していると言えよう。
最後に…
本作を観て思ったのは、ハル・ハートリー監督はジム・ジャームッシュやアキ・カウリスマキの系譜をゆく。ゆるーい映画の巨匠と言えます。音楽や画面は格好良く、そして内容はアンニュイに生きる者たちの心情を繊細に描いていく。これはブンブン、クラウドファンディングに参加せねば!と思いました。
ハル・ハートリー関連記事
・「シンプルメン
」
・「愛・アマチュア
」
・「アンビリーバブル・トゥルース
」
コメントを残す