“Ç”【レポート】マリリンモンロー主演「紳士は金髪がお好き」の技術論

ミュージカルシーンの特徴

特徴として、冒頭のダンスが挙げられる。冒頭では上記のようにマリリン・モンロー扮するローレライとジェーン・ラッセル扮するドロシーがショーでダンスを踊っているところから始まる。そして、曲がキリのいいところでスタッフロールを流す。そして、スタッフロールが終わったら、曲の続きから踊り出す、そしてバックステージに移るというまるで、映画を観ている人でもオペラ座やショーの席にいるような雰囲気を醸し出していた。と同時に、このオープニングを観ただけで、また曲を聴いただけで「主人公は田舎から上京して、風俗系ダンサーとして働く下級の女」だと分かるのである。

また、二人の女性が主人公であることを効果的に使うため、“Bye Bye Baby”を歌うシーン。つまり、二人の女性が船にいる男を漁るシーンにおいて、交互にダンスを織り交ぜるのはもちろん、時折片方が、もう片方の恋愛状況を観察するといったダンスを入れない歌だけのシーンを入れることで物語を効率よく進めるためのミュージカルという方法を編み出していた。

最後に、やはりこの作品の主人公はダンサー。そしてパリに渡るという設定からも分かるとおり、アメリカ人のフランスに対する憧れが少なからず滲み出ている。パリで路頭に迷った主人公はダンサーとして雇ってもらいダンスショーで稼ぐシーンがある。その演目の中にバレエのシーンがあるのだが、二人はバレエを踊らない。彼女たちが踊るのはタップではないが、バレエらしい踊りでもない。つまり、ヨーロッパに憧れタップを捨てるが、真似をしようにも出来ないアメリカ人の葛藤がメタファーされているのである。この葛藤を描く媒体として主人公を女性にしたのは、もし意図していたのであれば凄いテクニカルな手法と言えよう。

注) 「映画検定 公式テキストブック[増補改訂版] 映画検定全問題と解答」p189より引用

〈参考資料〉
・KINENOTE
http://www.kinenote.com/main/public/home/
・「映画検定 公式テキストブック[増補改訂版] 映画検定全問題と解答」
 キネマ旬報映画総合研究所編、キネマ旬報社、2012年

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