『BACURAU』ブラジルの『ミッドサマー』は自宅から政治家を燃やす

バクラウ(2019)
BACURAU

監督:ジュリアノ・ドネルス、クレベール・メンドンサ・フィリオ
出演:ウド・キア、ソニア・ブラガ、ジョニー・マース、カリネ・テレスetc

評価:75点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

第72回カンヌ国際映画祭でコンペ出品時から話題となり、審査員賞を受賞。カイエ・デュ・シネマ年間ベストでも編集部ランキング4位、読者ランキング6位に輝いた作品『BACURAU』を観ました。監督は、『Neighbouring Sounds』、『アクエリアス』で注目されているブラジル出身監督クレベール・メンドンサ・フィリオ。私も大好きな監督だけに期待度が高まりますが果たして…

『BACURAU』あらすじ


After the death of her grandmother, Teresa comes home to her matriarchal village in a near-future Brazil to find a succession of sinister events that mobilizes all of its residents.
訳:祖母の死後、テレサは、その住民のすべてを動員する不吉なイベントの連続を見つけるために、近未来のブラジルの彼女の母系の村に家に帰ってくる。
IMDbより引用

ブラジルの『ミッドサマー』は自宅から政治家を燃やす

蛇行運転する水運搬車は広大な大地を爆走する。《SE FOR, VÁ NA PAZ(安心して行くならここを通れ)》と村BACURAUへ続く道を疾走するするのだ。しかし、妙なことにこの蛇行する車は、地面に落ちている棺桶を粉砕しながら爆走している。途中で、どうやら交通事故があったらしく棺桶が大地に散乱しているのだ。

やがてBACURAUに到着するテレサは、村人に挨拶するが、村人は無愛想だ。ようやく友人と会うのだが、出会い頭に謎の薬物を口に入れるのだ。そして、観客はまるで『ミッドサマー』の観光客さながら、村の謎の儀式と殺戮を目撃することとなる。この村は、荒野にあり、水や食料は輸送車頼みだ。しかしながら、折角の水運搬車に穴が開けられたり、Google Mapsから村が消えたりと不審な事件が相次いでいる。村人は知っているのだ。それは、選挙で市長再選を狙う政治家トニー・ジュニアの策略だということに。彼は村から自由を奪い、自由を提供する救世主としての立ち位置を築く為に、ヤクザを使って嫌がらせをしているのです。

カイエ・デュ・シネマでのインタビューによれば本作は、2009年にブラジル映画祭に短編『Recife Frio』を出品した際にジュリアノ・ドネルスと出会い企画が始まったとのこと。市民の純粋な対抗や空気感を『Neighbouring Sounds』や『アクエリアス』で描いてきたが、2015年にジャイール・ボルソナーロが権力を強め、警察による殺人件数が伸びたことにより、極端で不合理なブラジル社会になってきたことから、映画や文学はそれに耳を傾ける必要があると強く感じ本作を製作した。BACURAUという地名は、架空の名前であるがレシフェの様子を意識している。ロケ地は10,000キロメートルも車を走らせて見つけ、世界を作り上げました。

本作は、一見するとジャンル映画だ。海外のジャーナリストが『七人の侍』と『ホステル』を足し合わせたような作品と言っていることから、単純なスリラーに思えるかもしれない。しかし、本作で重要なのは建物の内側と外側の関係性である。

例えば、トニー・ジュニアが村にやってくると、村はガランと人がいなくなる。そして無人の道に「出ていけ!このクソ野郎!」と罵声が飛び交う。また、ヤクザとの戦闘は、奇妙なことに死角からの攻撃が中心となり、ジャンル映画を意識して見ると、直接的なアクションが極端に少ないことから肩透かしを食らうこととなっている。しかし、これは監督も言及していることで、外の空間のあらゆる方向に飛び交う情報のノイズと室内における一つの思想が真っ直ぐに伸びた世界を投影している。

屋外では民主主義という名目の元、あらゆる意見が飛び交う。それには、マジョリティの意見に対して暴言を吐くマイノリティの存在がいたりする。また集団が一つの方向を向いて儀式をすることによる薄気味悪さも存在する。だが、プライベートな空間である室内に入るとそう言ったノイズが入らない。つまり、SNS社会で自分の周りのみが世界となったと勘違いしてしまいそうな現代社会や、民主主義が持つノイズを無視する為に影から闇討ちをしていく汚れた政治というものを象徴していると言えるのだ。UFO風のドローンといったチープなガジェットも、虚実曖昧模糊な陰謀の象徴として映画を盛り上げていく。

そして、映画は観客を置き去りにして政治家と市民の陰湿な攻防を繰り広げる。その空間に漂う不穏な空気こそ、現代社会世界各国で蔓延る汚職と独裁と暴力の得体の知れない恐怖を投影していると言えよう。この政治的バイオレンスアクション映画日本で公開されることを祈ります。個人的に『七人の侍』や『ホステル』よりも政治色が強い『ミッドサマー』といった感じの作品でした。

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