『The Beach Bum』もしも世界ふれあい街歩きがウィリアム・バロウズに迫ったら…

ザ・ビーチ・バム(2019)
The Beach Bum

監督:ハーモニー・コリン
出演:マシュー・マコノヒー、アイラ・フィッシャー、スヌープ・ドッグ、ザック・エフロンetc

評価:80点

おはようございます、チェ・ブンブンです。

『KIDS/キッズ』の脚本や『スプリング・ブレイカーズ』を手がけたカルト監督ハーモニー・コリンの新作『The Beach Bum』を鑑賞しました。前作『スプリング・ブレイカーズ』がアート映画を装った虚無の深淵を魅せるストロングゼロ映画だったのですが、今回は直訳すると《ぐうたら浜辺》という意味から察するにさらにストロングゼロ度が増しているようです。マシュー・マコノヒー演じるドラッグ中毒の詩人のぐうたらライフが描かれている作品で、Rotten Tomatoesの評判は然程芳しくない。またアメリカでの興行収入もマシュー・マコノヒー史上最低を叩き出した問題作です。しかしながら、観てみると、これが素晴らしい作品でした。

『The Beach Bum』あらすじ


A rebellious stoner named Moondog lives life by his own rules.
訳:ムーンドッグという名の反抗的なストーナーは彼自身の規則によって人生を謳歌している。
※Imdbより引用

世界ふれあい街歩きがマイアミのウィリアム・バロウズに出会った

本作は、まるで『世界ふれあい街歩き』のようなタッチで描かれている。ププープーププープー、ププププーププー(ナレーション)ここは人気のリゾート地マイアミ。海の底まで透けて見えるわー。浜辺が太陽に照らされキラキラとしている。と今にも『世界ふれあい街歩き』の序文が流れそうな情景の中、カメラはある男に迫る。あれってあそこで何をしているんだろう。こんにちわー、何されているんですかと。

カメラが向く矛先にはマシュー・マコノヒー演じる詩人がいる。彼は日夜ダラダラとマイアミのビーチを渡り歩き、様々なドラッグを嗜み、女から詐欺を働いたりしている。彼はどうやらかつて成功を収めた詩人のようだが、世渡り上手で得た莫大な富を持て余し、創作なんかしようとしていない。ただひたすらぐうたらし、空っぽな自分の言葉をなんでも詩だと言いふらして回っている。そんな彼はひょこんなことから、財産没収の危機に陥り、創作に本気を出そうとしているところにカメラは迫っていきます。

この手の映画って大抵、クズが苦労して創作したり成長しようとするところに焦点が置かれる。『裸のランチ』、『酔いどれ詩人になる前に』、『オン・ザ・ロード』エトセトラ、エトセトラ。しかしながら、本作はそんな型なんか糞食らえだと破り捨ててしまいます。何も成長しないまま、思わぬ形で映画が終わってしまうのだ。なるほど、Rotten Tomatoesの評判が低いのも納得です。しかしながら、それっているのは現実の不条理の真理をついている。人は変わった者に興味を抱く。天才的センスのあるお笑い芸人やハリウッドセレブのような。彼らは、我々が抑制してしまうであろう欲求をいとも簡単に解放する。その得体の知れなさに対する好奇心と、羨望がグイグイと引き込み、彼らが特に何もしていなくても面白いのだ。実際に、本作ではムーンドッグがただマイアミを彷徨っているだけで、執筆する場面なんて2分もない。いつの間にか名著『The Beach Bum』が爆誕しているのだ。働かざる者食うべからず、苦労は買ってでもしろとよく言われるが、世の中はそんな人間様様の条理なんか御構い無しであることに着目したこの視線が非常に鋭い。

そして、そこに隠し味としてウィリアム・バロウズの残像を織り交ぜることで、本作がより一層高度な喜劇へと押し上げられていく。ウィリアム・バロウズは、逸話に枚挙ない作家だ。ドラッグ中毒であり、その研究をそのまま小説にしてしまっているのは序の口で、ウィリアム・テルごっこをして妻を殺してしまったり、彼氏に振られて小指を詰めたりしている。小説も小説で、ドラッグによって引き起こされる幻覚をそのまま文章にトレースしてみたりしている。そんな彼が意欲的に取り入れた《カットアップ》の手法をこの映画は取り入れている。カットアップとは、一度作り上げた文章をバラバラに解体し、並び替える文章手法で、偶然生み出される表現の妙を期待した演出となっている。本作は、ムーンドッグのふらふらした生活を時間も空間も入り乱れながら描いていく。なので、あらすじを説明しようものなら苦しむだろう。数十秒ごとに場面が切り替わり、焼きつくような日差しの中で彼が彷徨う様子しか画面に提示されないのだから。しかしながら、最後まで観ると、段々とモザイクのように本作の言わんとしていることが分かってくる。『スプリング・ブレイカーズ』では輝ける青春の中にある空っぽの内面に迫ったが、本作は対照的に外から見た空っぽを捉えている。そこには空っぽだが魅力的に映る謎の人物がもたらす不条理な景色があり、それこそが現実であると痛烈に我々は突きつけられるのだ。『スプリング・ブレイカーズ』に劣らず素敵なストロングゼロ映画でした。

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