『さらば愛しきアウトロー(The Old Man & The Gun)』ロバート・レッドフォード有終の美!こんな強盗に口説かれたら胸キュンだ!

さらば愛しきアウトロー(2018)
The Old Man & The Gun

監督:デヴィッド・ローリー
出演:ロバート・レッドフォード、シシー・スペイセク、ケイシー・アフレック、エリザベス・モスetc

評価:80点

今、日本の映画ファンを魅了している『A GHOST STORY』。あまりの美しさから2018年映画ベストテンに入れる方が沢山目撃されている。これにより、今までは知る人ぞ知るカルト監督として有名だったデヴィッド・ローリーが一般の映画ファンの間にも知れ渡るようになりました。そんな彼の新作がこの夏になってきます。タイトルは『The Old Man & The Gun』。直訳すると《老人と銃》です。実在した伝説の脱獄犯兼銀行強盗であるフォレスト・タッカーの半生を描いた作品。本作でフォレスト・タッカーを演じたロバート・レッドフォードはこの作品で俳優生活を引退すると宣言していることからアメリカで話題となっています。

日本公開は7/12(金)ですが、一足早く鑑賞しました。これが小品ながら非常に味わい深い作品でした。

『さらば愛しきアウトロー』あらすじ

1980年代から銀行強盗が多発していた。刑事ジョン・ハートは聞き込みをするのだが、何故か被害者は口を揃えてこう言う。

「彼は実に紳士的だった」

決して、発砲はしない。話術だけで銀行からお金を掠め取り、家族にすらその事実を明かさずに生きた男フォレスト・タッカーを彼は追い続けるのだが…

レッドフォード有終の美

本作はレッドフォードの魅力に溢れた作品の一言に尽きます。

タイマーの音がチクタクチクタク鳴り響く中、レッドフォード扮するフォレスト・タッカーは颯爽をお金を強奪し、去っていく。車を走らせていくと、故障中の車と遭遇する。一旦立ち去るのだが、また戻ってきて、

「助けは必要かい?」

とおばさんに歩み寄る。車が視覚となったところでパトカーは通り過ぎる。華麗なるカメラワークに、観るものは惹きつけられる。第一印象は最高である。そして、タッカーはそのおばさんを連れてカフェに行く。

「馬が好きなんだね」

とタッカーは甘美な笑みを浮かべながら話題を振る。おばさんは、顔を赤めながら、

「なんで分かったの?」

と答える。彼が車の中で本業を偽って《セールスマン》だと言っていたが、それに説得力がまとわりつく。彼は、素晴らしいビジネスマンなんだと、彼の正体を知っている観客ですら信じてしまいそうになる。

「僕は、まだやったことのないリストを作っていて、乗馬はそのリストに入っているのさ」

と次々と、相手の興味を掘り下げて自分を語っていく、あまりに魅力的なもんだから、おばさんは「あなたは払わなくて結構よ」と言う。そしてすっかりタッカーの虜になってしまった彼女は、確信めいたことを訊く。

「あなたはどんなモノを売っているの?聖書とか?」

しかし、彼は、

「秘密のモノさ。多分、もしあなたにその正体を話したら、二度と私に会いたくなくなるだろう」

と交わす。彼は知っているのだ。彼女の心を。

彼女は、彼に会いたい一心で連絡先を伝票に書いて渡す。すると、サラッと彼はメモを書いて彼女に差し戻す。彼女は、目を疑う。

「ちょっと冗談でしょ?」

彼は、「本当さ、あなたを信頼している。嘘をついている思う?それとも真実について語っていると思う?」

と駆け引きを続ける。そして自分の似合っている場所は銀行さと大胆にも銀行強盗の手口を教え始める。しかし、今まで散々ウィットに富んだ話を披露してきた彼が本当に銀行強盗なわけがないと彼女は信頼してしまう。そして最後に、

「僕は、君のことがとっても好きだ。実際のところ、僕は君に失敗しているかもしれない。どうか私の心を壊さないでくれ。いいかい」と囁く。

これでチェックメイト。彼女は彼の心に完全に堕ちるのです。

ここまで僅か10分。あまりのレッドフォードの甘い演出に男であるブンブンも恋に落ちそうです。まるで、『スティング』や『華麗なるギャツビー』のレッドフォードが帰ってきたような軽妙さと、老年になり熟成された旨味が一気に観るものの心を潤します。

鮮やか、ただ鮮やか

もう一度言う。これはまだ映画が始まって10分だ。銀行強盗も全貌をまだ見せていない。デヴィッド・ローリー監督は、たった10分に命をかける男でないことは『A GHOST STORY』や『ピートと秘密の友達』を観れば容易に分かる。なので、当然ながら本作も序の口だ。こっから妻に内緒で銀行強盗をするシーンが連続して展開されるのだが、これがどれも鮮やか。

例えば、刑事ジョン・ハートが金をおろしに銀行にいるにも関わらず、大胆かつスマートに金を奪う様子が描かれるのだが、巧みに刑事とタッカーと銀行員にカメラがパンしていき、観客はハラハラドキドキしながら画面を観る。ほんの5mぐらいの距離に刑事とタッカーが共存しているのに、互いに気づかないのだ。

また、ある場面では、いつものように銃をチラつかせ銀行員を脅すのだが、その銀行員が泣き始めてしまう修羅場に遭遇する。すると、タッカーは別に慌てる素振りを見せず、「泣かないでくれどうしたんだい?」と囁く。するとその銀行員は、「私、勤務初日なんです。なのに、こんな罪を犯すなんて…」と告白をする。それに対して、タッカーは「君はいい仕事をしたよ。ありがとうね」と言い去っていくのだ。銀行員生活初日、一番最初に彼女の活躍を褒めたのは銀行強盗だった。その皮肉もあり、彼女は警察官に「彼は、とても優しい男だった。」と呆然となりながら語るのだ。

このように、本作は全編通してタッカーの魅力しかありません。それは裏を返せば、ロバート・レッドフォードの魅力しかない映画となっています。軽快で、別に教訓めいたことも何もないんだけれども、なんか愛らしくって心が踊らされてしまう。そして、別に悲しいエンディングもなければハッピーエンドでもない、なんでもない結末にツーと思わず涙がこぼれてしまう。これは、ロバート・レッドフォードファンはもちろん、ダンディなおじさんを観たい人は是非挑戦してほしい作品でした。

日本公開は夏。果たして、邦題は『老人と銃』のままでいくのでしょうか?ひょっとしてマダム系映画館上映作品のような長くてダサい邦題がついてしまうのでしょうか?

邦題は『さらば愛しきアウトロー』に決まりました。うーん、やっぱり『老人と銃』、あるいはレッドフォードの人生を匂わせるのであれば『華麗なる駆け引き』あたりがよかった気がする。

とりあえず、デヴィッド・ローリー監督はこれからも注目していきたいと思いました。

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