【東京フィルメックス】『帰れない二人(アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト)』北野武たるユーモアを継承 しかし、3部が蛇足

帰れない二人(2018)
ASH IS PUREST WHITE

監督:ジャ・ジャンクー
出演:チャオ・タオ、リャオ・ファンetc

評価:60点

東京フィルメックスのクロージングイベントに参加してきました。クロージングはジャ・ジャンクーの『帰れない二人(アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト)』。カンヌ国際映画祭では無冠で終わったものの、批評家絶賛だった作品だ。東京フィルメックスの授賞式と一緒になったクロージングイベント。本作について紹介する前に、今回の東京フィルメックスの受賞結果を発表します。

第19回東京フィルメックス受賞結果

観客賞:コンプリシティ

中国から技能実習生として日本にやってきた青年が犯罪に手を染めてしまう、昨今の日本が抱える問題を抉り出した近浦啓監督の長編デビュー作が受賞しました。本作は、資金面、劇場公開面で非常に苦労されたときく。しかし、『アイカ』以上に、日本人が観なくてはいけない作品だと思うので是非とも劇場公開して欲しいなー

学生審査員賞:ロング・デイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト

3人の学生審査員が選んだ作品に贈られる賞。今回は、ビー・ガンの異色3D映画『ロング・デイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』が受賞しました。やはり、学生さんのインスピレーションをかなり刺激したようで、講評も「僕らは宇宙からやってきた監督に別世界に、連れ去られた」とユニークなことを話されていました。ブンブンも納得の傑作だ。

スペシャル・メンション:夜明け

今年のフィルメックスは、超絶技巧の傑作揃いだった。『マンタレイ』に『ロング・デイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト』に『象は静かに座っている』と強豪が立ち並ぶ中、日本映画が受賞した。是枝裕和監督の愛弟子・広瀬奈々子が柳楽優弥主演に描く家族のドラマに審査員はノックアウトされたようだ。

審査員特別賞:轢き殺された羊

※スマホの電池切れで写真はありません…

タルロ』のペマツェテン監督の新作ロードムービーが受賞チベットのロードムービー兼西部劇と聞いて観たくなりました。非常に評判が高いので日本公開してほしいものだ。

最優秀作品賞:アイカ

※スマホの電池切れで写真はありません…

てっきり、ウェイン・ワン監督は『象は静かに座っている』を選ぶと思っていたのだが、『アイカ』が選ばれました。審査員が5人と少ないので、奇抜な映画を選ぶかと思っていたのだが若干の肩透かし。でも、『アイカ』は今世界的に抱えている移民問題に対し、鋭く問題提起している作品なのでこれをきっかけに多くの人に観ていただけたらなとブンブンも思います。

『アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト』あらすじ

2001年から2018年に渡るヤクザの女の一途な愛を3部構成で描く

2部構成なら傑作だった

ジャ・ジャンクーの映画はどうも苦手だ。今回も、序盤は「いつものジャ・ジャンクーか…これは厳しいな…」と思っていたのだが、1部の終盤から2部にかけてとてつもなく面白くなった。炭鉱を取り仕切るヤクザの集団。男社会に輝く紅の女は、ビンという男を愛し、オタサーにおける姫のごとくブイブイ言わせている。そんなヤクザ集団は、「俺らはどこへ行っても仲間だ!」と盃を交わすのだ。

ビンは、女に銃を魅せこう語る。

「銃を持つと命が短くなる」

ビンのことを強く愛している彼女は、

「今警察の取り締まりが厳しいから、銃はやめてね」と言う。

この映画、ヤクザ映画にも関わらず、銃は数発しか撃たれない非常に珍しい作品だ。徹底的に、発砲描写を抑制することで銃弾の重みを表現している。大量のチンピラに急襲され、ピンチに陥った時に、やむ得ず彼女は銃を発砲してしまう。そのたった数発の銃弾が、彼女とビンを引き裂いてしまうのだ。投獄される彼女。時は軽く、あっという間に5年の月日が経つ。変わりゆく中国の風景に想いを寄せてビンに会うために、旅に出る。しかしながら、「俺らはどこへ行っても仲間だ!」と言っていた仲間はどこかそっけない、というよりもそもそも彼女のことすら忘れていたのだ。

本作は中国という広大な土地の利点を活かして『オデュッセイア』たる壮大でカタルシスを生み出す物語を展開する。それでもって、時は残酷なほどに過ぎ去り、友情も脆く崩れ去ってしまう様の哀しさを、意外なことに北野武的ユーモア織り交ぜて描いている。逞しすぎてクレイジーな、チャオ・タオ扮する女の生き様に観るものは一時も目が離せなくなります。ただ、この作品が残念なのは、第3部があまりに投げやり蛇足だったことだ。第2部のあのびっくりエンディングで終わらせとけば、彼女の《孤独》を最大限強調して終わらせることができた筈なのに、物語の流れに断絶を感じる強引な描写、そして突然映画を終わらせるエンディングに肩透かしを受けました。惜しい!

日本公開は来年、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館で上映されるとのことです。

ブロトピ:映画ブログ更新

ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です