【考察】『第三世代』闘争が祭に化ける瞬間

第三世代(1979)
Die dritte Generation

監督:ライナー・ベルナー・ファスビンダー
出演:フォルカー・シュペングラー、ビュル・オジエヒルデ・クリーガー、ハンナ・シグラetc

評価:60点

東京国際映画祭、ラテンビート映画祭、東京フィルメックスetc…

東京都内は映画祭大パニックだ。予算よりも時間との戦いで、働くサラリーマンは数少ない週末、有給を使っていかに映画を観る時間を作るのかに頭を悩ませている。そんな渦中、渋谷ユーロスペースでライナー・ヴェルナー・ファスビンダー幻の作品 『第三世代』、『13回の新月のある年に』が公開された。海外のファスビンダーDVDボックスにも収録されておらず、不定期にアテネフランセで行われるファスビンダー特集でしか観ることのできない作品でした。そんな幻の作品が日本で公開されるとは嬉しいことだ。ブンブン、頑張って初日観に行きました。

『第三世代』あらすじ

「意志と表象としての世界」をスローガンに活躍する秘密結社・第三世代。しかし、確固たる思想よりも前に、スリルを求めていくメンバーによって段々と警察に目をつけられていく…

渋谷哲也の補助線が謎を解く

正直難解でよく分からなかった。『WR:オルガニズムの神秘』系の政治的思想を破壊的ネタ映像の繋ぎ合わせで暗号の様に伝えていく、ただ『ひなぎく』と比べると映像美は希薄で体感時間が長く感じる。ファスビンダー最難問と言われている本作だが、その冠に偽りはなかった。しかしながら、映画上映後のドイツ映画研究者・渋谷哲也による解説によって一気に本作品の本質が分かってきた。このトークショーは、時間が短かったこともあり、渋谷哲也が完全に本作の謎を解明するのではなく、謎解き・考察のとっかかりを与えるというものだった。

本作は、世界中で五月革命やあさま山荘事件など政治闘争が多発していた時代を俯瞰している作品とのこと。ドイツにもバーダーマインホフ(ドイツ赤軍)が過激な政治闘争を繰り返していた。『第三世代』とは、闘争初期の確固たる信念が、第三世代にまで行くと、ただただ暴れたい人の愉快犯集団になり、本来の目的が瓦解していく様子を皮肉った作品だということ。ただ、それが単に政治団体を批判するのではなく、彼を取り巻く警察や市民にまで批判の刃を向けるという歪な構成になっている。そして、若松孝二と比較すると見えてくるものがある。

この渋谷哲也氏の補助線により、なんとなくこの手のアヴァンギャルド政治映画の見方が分かってきた。若松孝二も、ポルノ映画という仮面の下で政治思想を暗号の様に映画に込めた。それこそ、本作と相似の関係にあるのが、『天使の恍惚』だ。あれも、政治闘争が段々退廃していき、なぁなぁとなっていく様子が描かれていた。本作も、無軌道でなぁなぁなな政治犯の日常が押並べられ、それが段々と警察に追われる様になり崩壊していく様が描かれている。そこでは、イジメがあったり、仲間内での盗みも横行している。内部から思想なく崩壊していくのだ。それを社会はまるで関心がないように流れていく。警察だけが彼らに興味を示すが、横暴な方法で取り調べをする。
政治闘争が、興ざめしていく時代に、その興ざめのプロセスを描く。そこに本作の映画史的重要さがあるのだと感じた。とはいえ、平和ボケしている今観ると、睡魔が襲ってくる映画であった。似た様なテーマを扱った『菊とギロチン

』と比べると、映画としての魅力に溢れた作品であったが、正直キツかったぞ。

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