【釜山国際映画祭・ネタバレなし】『バーニング劇場版』村上春樹『納屋を焼く』のその先…

バーニング劇場版
BURNING(2018)

監督:イ・チャンドン
出演:ユ・アイン、スティーヴン・ユァン、チョン・ジョンソetc

評価:80点

村上春樹の『納屋を焼く』がまさかの映画化。『ペパーミント・キャンディ』の製作に携わったNHKが、『ポエトリー アグネスの詩』以来永い沈黙を貫いていたイ・チャンドン監督の心を動かし、村上春樹の小説に挑ませた…

【ネタバレ】『納屋を焼く』イ・チャンドン版を観る前に村上春樹の原作を読んでみた

『バーニング劇場版』あらすじ

Jong-suは作家である。韓国の片田舎からよく都心にやってくる。ある日、彼はHae-miと恋仲になる。そんな中、彼女はアフリカに行く。そして、Benという男を連れて帰ってくる…

村上春樹『納屋を焼く』のその先…

カンヌで上映されるや、批評家に絶賛され、国際批評家連盟賞を受賞した。私の友人も「今年ベスト1」と言っており、期待値高めで観た。

非常に不思議で歪な映画だった。原作を読み、論文まで読んだ上で書評を書いた私にとって前半2時間まで、「過大評価されすぎなのでは?」と思った。

「私(Jong-su)」がパントマイムをしている「彼女(Hae-mi)」と出会う。「彼女」はアフリカに行き、新しい「男」を引き連れて帰ってくる。「男(Ben)」から《納屋を焼く》という趣味を告白される。「私」は次に「男」が焼く納屋を探すが、見つけられず、「彼女」は何故か消えてしまう。しかし「男」は「納屋は焼いたよ」と言い出し、何が何だかわからなくなる、、、

これを忠実に、じっとりじっとり、3歩進んで2歩下がるテンポで描く。特に、「男」が「私」に告白する場面には多くの時間を費やします。なので、睡魔が襲ってきたのは確か。また、本作ならではの要素もなかなか意図が読めず、そしてフォークナーや『華麗なるギャツビー』という原作を読み解くキーワードも記号的にしか配置されない。これは私に合わないか、、、そう思った矢先、本作は牙を剥く。『納屋を焼く』のその先にて、イ・チャンドンの鋭い解釈が提示され、すべての伏線が繋がっていくのだ。

猫、2大の車、部屋とアクセサリーetc…これらの意図が分かった瞬間鳥肌がたった。

ネタバレになるので、この辺でやめとく(詳細は後日アップのネタバレ記事を参照してください)が、イ・チャンドンは『納屋を焼く』を「ギャッツビーになれなかった者の苦悩」と捉え、終盤40分で驚きの演出を魅せた。なんなんだこの鋭さは!全く衰え知らずなイ・チャンドンにビビりました。

多分ハルキストも納得な一本となるでしょう。

日本公開決定

2019年2月にTOHOシネマズシャンテ他にて公開が決まりました。邦題は『バーニング劇場版』と非常にダサくて哀しいものとなっていますが、これはNHKが先にドラマ版を放送するからなんだとか。それにしても、この傑作に安っぽい『劇場版』という単語を充ててほしくなかった。

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