『劇場版フリクリ オルタナ』the pillowsが赤色彗星となって青春に墜ちた…

劇場版フリクリ オルタナ(2018)

監督:上村泰、鈴木清崇etc
出演:新谷真弓、美山加恋、吉田有里、飯田里穂etc

評価:65点

TOHOシネマズフリーパス発動中って、まるでロックフェスティバルに来たかのような面白さがある。劇場のスケジュールをみて、何を鑑賞するか決める。観たい作品と作品、間が空いてしまったらふと横を見てみる。名前は知っているが、普段は全く興味湧かない作品、監督も知らなければ原作も知らない作品。こういったのに無性に惹かれる。そして、それが思わぬ収穫だったりする。

今回、フリーパスを使用していなかったら、絶対観ていないようなアニメ映画を観た。それが『劇場版フリクリ オルタナ』だ。内容も全く知らなかったのだが、劇中歌をthe pillowsが担当しているということで、まるで彼らの野外上映を観るような気持ちで観にいった。Filmarksでの評判は散々だったのだが、実に変な作品であったのだが、どこか心に残る作品であった。

『劇場版フリクリ オルタナ』あらすじ

『新世紀エヴァンゲリオン』や『攻殻機動隊』シリーズ、『東のエデン』を製作して来たProduction I.GのOVAシリーズ劇場版。高校三年生。進路に迷う女子高生・河本カナは毎日が過去の寄せ集めのようなダラダラとした日々を送っていた。しかし、ある日、彼女の前に宇宙人であるハルハラ・ハル子が現れ、そしてカナの額に花が咲いた!地球滅亡のカウントダウンが近づく中、迷える女子高生は未来を模索する…

遠い日の散らばった夢は
星になって頭上にあった…

本作は、正直よくわからない映画だ。『けいおん!』のような《ゆるふわ青春もの》だと思っていたら、途中から宇宙人が現れ、凶悪なロボットが現れ、バトルが繰り広げられる。ヒロインの額からは、花が!ムスタングが!トラックが!飛び出す。そして、何故か地球滅亡の危機なのに、ヒロインら仲良し4人組はダラダラとした日々を過ごす。ちょっと何言っているのか分からないとは思うが、全て実際に劇場で起きたことだ。

あまりに物語ることを放棄した演出に、まあこれは評価に甘いFilmarksでの点数が異常に低いのは分かる。

しかし、なんなんだろう。この文化祭感、夏フェス感。真夏にポツンと雫の汗を流しながらこちらを見ている、グレープフルーツのエキスを摂取した時のような甘酸っぱさが、心に広がる作品だった。the pillowsが元々文化祭とか夏フェスとか、一過性の狂乱で聴きたいバンドってこともあり、『Freebee Honey』,『LITTLE BUSTERS』のような《陽》を前面に押し出した曲と曲、その間にぽっと置かれる『白い夏と緑の自転車 赤い髪と黒いギター』のようなアンニュイなサウンドは本作で描かれる《輝ける青春》、《セブンティーンは待ってくれない》というテーマと合致している。

永遠だと思っていた青春、仲良し四人組との日々。それが高校三年生になり揺らいでいる。進路希望?未来なんか分からないよ、大学で何を学ぶのか?どんな仕事をしたいのか全く分からない。でも、周りは徐々に自分たちのやりたいことを見つけている。大人っぽくなっている、夢を見つけそこに向かって走っている。輝ける青春の終わりに抱くセブンティーンの心の惑いを、宇宙人の侵略という要素をメタファーとして描いている。青春は完璧じゃない。むしろ、完璧じゃないこそが完璧最強だ。宇宙人がおもむろに現れ、人類が滅亡しそうになっても、青春は淡々と流れる。ちょっとずつしか成長はしないし、そう簡単に思い出は色褪せない。この青春の混沌を表現しているように見え、個人的には好きな作品でした。

正直、人に勧められるものではないし、本当に常軌を逸している。映画の構成としても、アニメ5話ほど無理やり2時間ちょいにまとめました感が強いのだが、それでもこの甘酸っぱい青春の日々に心を奪われた。そして、間違いなくthe pillowsファンは原作知らなくても観た方がいいと思った。

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