【キューバ映画特集】『ある官僚の死』日本も他人事ではない

ある官僚の死(1966)
LA MUERTE DE UN BUROCRATA(1966)

監督:トマス・グティエレス・アレア
出演:サルバドール・ウッド、
シルビア・プラナス、
マヌエル・エスタニージョetc

評価:75点

先日、シネフィルの映画友達に「この夏、キューバに行くんだ♫」と語ったら、「こんな映画知ってるかい?」と2本のキューバ映画を提供してくれた。一本が『低開発の記憶』トマス・グティエレス・アレア監督作『ある官僚の死』、もう一本は、『ルシア』だ。今回は前者、『ある官僚の死』について書いて行くぞ!

『ある官僚の死』あらすじ

労働者が死んだ。葬式が行われたものの、問題が発生!未亡人が年金を受け取ろうとしたら、死んだ労働者の労働者証が必要だというのだ。よりによって、その労働者証は墓の中。墓を掘り起こそうとするのだが…

バスター・キートンへの愛がカオス度を高める

本作は、国の証明書をスクリーンに映し出すところから始まる。役者の紹介、関係者のリストが書かれた紙が映し出されるのだ。インド映画みたいだ。しかし、驚くのがその紙の終盤、献辞リストが用意されており、黒澤明やオーソン・ウェルズなどに愛を捧げているのだ。それだけに、本作はいろんな名作の面影を感じる作品となっている。しかしながら、まさかのバスター・キートンやハロルド・ロイドのドタバタコメディを核として物語が進むのだ。漫画のようにコミカルに飛び交うモノ、社会派に見えないほどの追いかけっこ、労働者の死を説明する場面では、チェコアニメさながらのストップモーションアニメが展開される。さらには露骨すぎてそのまんま東な『ロイドの要心無用』の時計台シーンオマージュまである。『低開発の記憶』とは打って変わってシュールかつコミカル、ポップな演出だ。

日本も他人事ではない…

ただ、本作は全く笑えない、旋律のブラックコメディとなっている。死んだ労働者の労働者証を取得しようと、墓の掘り起こしを役所に懇願しようとするのだが、やれドキュメントが足りない、私の管轄外だとたらい回しにあう。ながーいながーい行列に並ぼうとも、1秒でも定時すぎたら強制終了明後日来やがれとなる。そして、一度マニュアルにない矛盾状態に陥入ればもう手詰まりだ。

これって、『わたしは、ダニエル・ブレイク

』まんまだ!そして、この柔軟性のなさは、日本にも通じるものがある。長い時間待っても、書類一つ足りなければ、代替策も示さず強制終了。人情はなく、自分の保身しか考えていない。これは単なる社会主義の弊害を描いているわけではない。今の役所問題に通じる深刻な「たらい回し」を描いた作品でした。

それをトマス・グティエレス・アレアは、クラシックドタバタコメディベースで描くことで圧倒的作家性が滲み出る。これはめちゃくちゃ面白かったぞ!

ブロトピ:映画ブログ更新

ブロトピ:映画ブログの更新をブロトピしましょう!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です