【ゴーモン特集】『とらんぷ譚』M.スコセッシ映画ファン必見!

とらんぷ譚(1936)
Le Roman d’un Tricheur(1936)

監督:サッシャ・ギトリー
出演:サッシャ・ギトリー、セルジュ・グラーヴ、
ピエール・アッシィetc

評価:90点

今、アンスティチュ・フランセ東京と横浜シネマ・ジャック&ベティでゴーモン特集が組まれている。《ゴーモン》と言っても、《拷問》ではない《Gaumont》だ。1895年から現在まで運営されている、世界最古の映画会社だ。有名なところで言えば『最強のふたり』を配給している。
さて、今回特集されているゴーモン社映画。このラインナップが素晴らしい。サイレント映画時代、連続活劇の巨匠ルイ・フイヤードの『レ・ヴァンピール 吸血ギャング団』に『ファントマ』シリーズ、ジョゼフ・ロージーの『鱒』、モーリス・ピアラの『ルル』に『私たちは一緒に年をとることはない』エトセトラ、エトセトラ…ハードコア映画ファンにとってヨダレヨダレのナイアガラの滝。まさに財布に拷問な企画だ。7月は、他にも『ストリート・オブ・ファイヤー』絶叫上映、に早稲田松竹開催のペドロ・コスタ特集と到底新作に手が回らない私。時間的にもタイトで、削らないといけない。7/15(日)の『とらんぷ譚』は諦めよう…と思っていた矢先、GAGAのVODサイト青山シアターで、配信されていた(激レア映画『レ・ヴァンピール 吸血ギャング団』も1話400円で配信中)。これはラッキーだ!というわけで早速鑑賞してみた…

『とらんぷ譚』あらすじ

サシャ・ギトリー監督自身が書いた小説『詐欺師の物語』の映画化。カフェで男が自分の四十年の生涯を徒然なるままに書き、回想していく。ビー玉を買うためにお金を盗んだ若かれし頃の《彼》は、親に夕飯抜きを言い渡される。朝起きてみると、家族が全滅していた!そう、家族全員毒キノコを食べて死亡したのだ!善人が死に、盗人悪人が生き延びるその皮肉を背に彼は激動の時代を送る。戦争、運命の女を経てやがて彼は詐欺師へと進化を遂げていくのだった…

『ビガイルド』、『ファントム・スレッド』の引用元

以前も語ったことなのだが、本作の冒頭毒キノコシーンはソフィア・コッポラの『The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ

』、ポール・トーマス・アンダーソンの『ファントム・スレッド

』の毒キノコシーンで引用されている。あまりにシュールで、滑稽で、画の側面からも面白いこのシークエンスは監督を惹きつけるものがある。

今回、しっかりとした環境で観て、本作は相当な映画に影響を与えていることが分かった。そして、技術的にもメチャクチャ面白い大傑作であった。何と言っても本作の魅力は、爆速まくしたてるような口調、それも主人公の過去語りで進む物語展開だ。

そう、ポール・トーマス・アンダーソンの『マグノリア』のような演出だ。

カフェで、男が自分の回想録を書く。カフェの店員やマダムに語りかけ、そして第四の壁を破り観客にまで語りかけてくる。会話に合わせて、目まぐるしく語り手の過去を上上下下左右左右BA、紙芝居のように魅せていき、ターンテーブルをキュッキュ動かすDJかよ!と突っ込みたくなるほどの逆再生/再生の連続という技まで披露する。

マーティン・スコセッシは多分惚れた

本作を観て、思ったのはマーティン・スコセッシは恐らく本作が大好きだということ。彼のオールタイムベストにも、彼が学生に観て欲しい映画選にも入っていないのだが、明らかにスコセッシの作風は『とらんぷ譚』譲りだ。主人公がまくしたてる口調で、自分の反省を語る。凡人が波乱万丈な人生を経て、闇の帝王になっていく。『カジノ』、『グッド・フェローズ』、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』で描かれる物語の原石と言えよう。

この手のタッチが好きなブンブンにとって、終始ヨダレが出っ放しでした。着地点の意外性まで含め、最後の1秒まで飽きることがない。マーティン・スコセッシ映画好きはもちろん、映画を学んでいる人は一生に一度挑戦してほしい作品です!DVDはプレミアがついており高いので、青山シアターで観るか、7/15(日)にアンスティチュ・フランセ東京で是非お楽しみあれ!

マーティン・スコセッシのオールタイムベスト

1位:8 1/2(1963,フェデリコ・フェリーニ)
2位:2001年宇宙の旅(1968,スタンリー・キューブリック)
3位:灰とダイヤモンド(1958,アンジェイ・ワイダ)
4位:市民ケーン(1941,オーソン・ウェルズ)
5位:山猫(1963,ルキノ・ヴィスコンティ)
6位:戦火のかなた(1946,ロベルト・ロッセリーニ)
7位:赤い靴(1948,マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー)
8位:河(1951,ジャン・ルノワール)
9位:シシリーの黒い霧(1962,フランチェスコ・ロージ)

10位:捜索者(1956,ジョン・フォード)

※Sight&Sound/2012年時点のランキング

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