【解説】「立ち去った女」今観なくて何時観る?金獅子賞受賞のラヴ・ディアス4時間復讐譚

立ち去った女(2017)
原題:Ang babaeng humayo
英題:THE WOMAN WHO LEFT

監督:ラヴ・ディアス
出演:チャロ・サントス・コンシオ,
ジョン・ロイド・クルズetc

評価:95点

フィリピンの怪物ラヴ・ディアス監督作が日本公開。ラヴ・ディアスのフィルモグラフィー史上初めて映画祭以外で観られる作品それが「立ち去った女」だ!何故、日本でなかなか陽の目を浴びないか?

それは上映時間にある。基本的に3時間超えなのだ。「昔のはじまり」5時間38分、「北(ノルテ)―歴史の終わり」4時間10分、そして「痛ましき謎への子守唄

」8時間9分…狂ってらっしゃるww

「立ち去った女」もヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲らなかったら、イメージフォーラムで公開されなかったろう約4時間の映画だ。

そんな珍しい作品だが、生憎日曜日の初回は50%くらいの入りであった。世界的にもラヴ・ディアス監督作品はDVD化されていないだけに、今観なくていつ観る?案件。ここで、皆さんの重い腰を上げる為に補助線を引きながら感想を語っていきます。

「立ち去った女」ってどんな話?

人生狂わせガールに嵌められて30年服役していた女ホラシアが、ある日せの狂わせガールが黒幕を告発したことで釈放される。彼女は怒りと哀しみに身を任せ、資材を投げ売り、黒幕のいる島へと潜入する。しかし、敬虔な彼女に黒幕を殺す度胸はない。そんな彼女の前に、悪魔的クレイジーガール、エッグマン、そして魅惑のドラッグクィーンが出現。貧しくスラムっている市井で心通わせていく、、、

ヴィジュアルフェチ発狂ものの映像美

本作はラヴ・ディアス監督が言っていることだが、5分くらいトイレで抜けたぐらいで話がわけワカメになるような映画ではありません。

4時間、白黒の写真集を観ているような作品です。1秒たりとも汚い絵面はなく、どんなにスラムっている場所もカッコよく映し出される。写真好きは鼻血ものでしょう。私が一番気に入った場所は、雨の中女が子どもたちに物語を語るシーン。最初は焚き火の微かな光が被写体を映すのだが、段々奥から車が迫ってきて、車の光で神々しく被写体の輪郭がくっきりと浮かび上がってくるのです。

ストーリーは意外とシンプル

私のオールタイムベスト1位ラヴ・ディアス映画「痛ましき謎への子守唄」はフィリピンの歴史と映画史の知識がかなりいる作品でした。

確かに本作は1997年頃のフィリピン史(調べる必要があるが中国系フィリピン人の誘拐事件が多発していたらしい)を知っていると分かる部分があります。しかし、基本的には女の復讐譚。暴論だが、「マグニフィセント・セブン

」と大差ない。

フィリピンは誘拐大国!

[blogcard url=”http://angeles-smile.com/blog/manila/kidnap-for-ransom-cases-down-by-24-percent”] 本作で語られるのは1997年上半期での誘拐事件が67件あり、1996年の3倍近く発生していたという事実。主に中国系フィリピン人が誘拐されていたとのこと。調べて観たら、今でも誘拐事件はフィリピンで多発しており、2013年には52件も発生しているとのこと。フィリピン情報サイト「フィリピンアンへレス情報Smile」によると、フィリピンにおいて誘拐拉致は産業として成り立ってしまうとのこと。本作は、フィリピン警察も十分対処できず、悲劇が多発するフィリピン現代史を批判した作品と言えます。

ユニークな登場人物

しかも、出てくる登場人物がユニーク過ぎて飽きることがない。ロウソク泥棒常習犯で髪を洗わないクレイジーガール。孵化直前の卵バロットを深夜に売るおっさん。そして、日本語を話せる魅惑のドラッグクィーン。総てのキャラクターをじっくり魅せてくれます。
特にドラッグクィーン編は、「マジック・マイク

」級にお捻りを入れたくなるショーシーンがあるので、一本満足どころじゃない。百本満足だ!

軽食持ち込みのススメ

本作は本当に面白い。同世代の方にも観て欲しい作品だ。4時間もあるので、是非ともオヤツや軽食、ミンティア、ドリンクを持ち込むことオススメする。ラヴ・ディアス監督もゆったり観ることを推奨しているからだ。しかしながら、本作を観るような方には意識高い系シネフィルがいるので怒られないよう対策する必要があります。

個人的には下記のマナーを守ることオススメします。

1.スマホはダメゼッタイ
2.ビニール袋から全て出しておく
(私の観た回では、ビニール袋のガサガサに怒っていた人いました)
3.一番後ろの列と最前列には怖いシネフィル率が多い。気をつけろ!
4.トイレが心配なら通路側を取ろう

ってことで、皆さん是非イメージフォーラムで本作をお楽しみ下さい!

ラヴ・ディアス監督作記事

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