【カイエ・ドゥ・シネマ週間】「美しき仕事」観た者の人生観を変える一本

美しき仕事(1999)
仏題:BEAU TRAVAIL
英題:GOOD WORK

監督:クレール・ドゥニ
出演:ドゥニ・ラヴァン、
ミシェル・サブボールetc

評価:5億点

アンスティチュフランセ東京で開催中のカイエ・ドゥ・シネマ週間に行ってきて、クレール・ドゥニ二本立てをしてきた。最大のお目当ては「美しき仕事」です。アカデミー賞作品賞を受賞した「ムーンライト

」に影響を与えていたり、「それでも夜は明ける」のスティーヴ・マックイーン監督のオールタイムベストに入っていたりする作品。また、東京国際映画祭の作品選定プロデューサーこと矢田部さんの生涯ベスト1作品(彼のツイート曰く「キングス&クイーン」と同順位らしい)の作品でもあります。Filmarksを観ると生涯ベストって語る者も多く、沢山の人が本作で人生観が変わってしまったとのこと。そんな「美しき仕事」を観ることができました。驚いたことに英語字幕35mmフィルム上映でしたが、特に問題なく観られました。

「美しき仕事」あらすじ

ジブチで兵士育成の副官を務めているガルーは、一人の兵士ソンテンに嫌がらせをする。しかし、ガルーは実はソンテンに愛を抱いていた…

「ホーリー・モーターズ」以来の衝撃

本作は、ドゥニ・ラヴァンありきの映画だという声を小耳に挟んでいたのだが、全くもってその通りだった。ドゥニ・ラヴァンのぐにゃんぐにゃんする動きに酔わせられる作品であった。

アフリカ・ジブチの民族音楽の鼓動、そして軍人の木魂する肉体が重層的に反復することで、観客は今まで気づかなかった感性を刺激される。時系列ももやはないに等しい。映画の中に広がる世界に身を任せるしかない。

この感覚は、同じくドゥニ・ラヴァン主演の「ホーリー・モーターズ」を観た時のようなショックを受けた。

映画は自由であった。

文学的作品

こう聞くと、さぞかしヴィジュアルだけの映画に見えるが、あの「ムーンライト」に影響与えているだけあって非常に文学的作品でも合った。例えるならば、三島由紀夫や大江健三郎の小説のような耽美さがそこにはあります。自己を抑圧して行動する軍人。立派な兵士に育てる側の人間がまさかの新米兵士に愛を抱いてしまう。「いや違う、俺には女もいるし、同性愛なんかじゃない!」と自分を責めるあまり、心の暴力性がその兵士の方へ向いてしまう。この心の奥底から絞り出される「叫び」の描き方が美しい。「ムーンライト」のあの語り口の原点はこれであった。

そして、大地が、ジブチの人々があまりに美しい、神々しすぎるからこそ主人公の葛藤が辛く重く観客にのしかかる。

もう観終わったあと、何時間も本作のことを考えてしまう程ステキな作品でした。
ってことで、ブンブンのオールタイムベスト10圏内に入るホームラン作品認定です!本当に出会えて良かった。

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