「美女と野獣(2017)」ディズニーがコクトー版に愛を捧げた!?見事な脱構築ファンタジー

美女と野獣(2017)
Beauty and the Beast(2017)

監督:ビル・コンドン
出演:エマ・ワトソン、
ダン・スティーブンス、
ケビン・クラインetc

評価:70点

ディズニーが「シンデレラ」に次ぎ、アニメの傑作「美女と野獣」を実写でリメイクした。「美女と野獣」と言えば、ジャン・コクトー版を皮切りに、5回ほど映画化されている。数年前にはレア・セドゥ主演でも映画化されている。何故今なのか?単にアニメ版を実写にトレースしただけなのか?「フランケンシュタイン」のジェームズ・ホエール監督の伝記映画「ゴッド・アンド・モンスター」でアカデミー賞脚本賞を獲ったビル・コンドンが監督しているのだが果たしてどうなのか?といろいろと疑問を持ちながら、会社の研修で知り合った方と観に行ったのだが、これがとても良かったぞ!

「美女と野獣」あらすじ

Once upon a time…
村で一番美しいベルにカナシイ出来事が勃発!森に行ったオトンが帰ってこないのだ!美貌の芯に強靱なメガトンハンマーを携え、ベルは森に潜入。すると、そこには謎の古城があって…

美女と野獣のテーマ「差別問題」を深化させた傑作

本作は単純な、1991年アニメ版のトレースではなかった。1991年版は、コクトー版や2014年版のように原作にあった暗い描写が取っ払われている。また、ベルの父親の罪を抑えめに描くことで、野獣の罪を際立たせた作りとなっている。

それに対し、今回の「美女と野獣」では、1991年版をベースにしていながらも、ベルの父親がバラを盗むシーンはジャン・コクトー版を意識してたり、美術面だけではなくアクションに拘っていたりとかなりの技巧を凝らしている。

中でも、今回素晴らしかったのは、「差別問題」を深化させていることにある。「人は見かけが9割」と言われるこのご時世、単純に「人は見かけではなく内面が大事だ」と唱えても心に響くものはない。本作では、登場人物に黒人や同性愛者を配置することで物語に深みを与えている。特に重要なのは、同性愛者のキャラクター、ル・フウの存在にある。ル・フウはLeFouと書くのだが、フランス語訳すると「キチガイ」という意味になる。同性愛者キャラクターに「キチガイ」という名前を起用するとは何事だ!と思ったのだが、これが物語で非常に上手い働きをしている。詳しくは語らないが、本作の真の主人公はこのル・フウだった。差別があり、抑圧された社会で、心が綺麗なル・フウが犯す過ちに心が締め付けられる。

美術が凄い

さらに本作は、美術のサラ・グリーンウッドと衣裳デザインのジャクリーヌ・デュランが素晴らしい仕事をしている。まさに「アンナ・カレーニナ(2012)」コンビだ。「美女と野獣」の主人公ベルは、フランス語で「美しい」という意味がある。それだけにベルに美しさないし存在感が必要。もちろんエマ・ワトソンは美しい。超絶可愛いのだが、それをジャクリーヌ・デュランがさらに盛り上げる。ただでさえ、サラ・グリーンウッドが美しすぎる世界観を創り上げているのに、エマ・ワトソン扮するベルの存在感が一切霞むことがない。青や赤、そして金のコントラストによる洪水に心が洗われること間違いなしだ。また、ミュージカルシーンで言えば、Perfumeがカバーしたことでも有名な「ひとりぼっちの晩餐会」の演出が面白い。バズビーバークレーのミュージカル技術を応用することで豪華絢爛さに拍車を掛ける。ぶっ飛んでいて、心の底まで圧倒する映像に心奪われた。

惜しい!

ただし、惜しかった部分もある。本作は130分と、ディズニー映画としては長尺なのだが、どうも駆け足で物語が進んでしまっている。ベルや野獣の繊細な心情変化なぞお構いなしにイケイケドンドン、物語は爆走していくのだ!それ故に、野獣のコンプレックスによる葛藤が伝わりにくくなっていたり、そもそもベルどんだけ心が寛容なんだと思わざる得なかったりする。「差別」を熱かった内容だけに物語をじっくり緻密に描いてほしかった。

とはいえ、私はこの「美女と野獣(2017)」は今までの作品の中でトップクラスのクオリティを誇っていると思う。自身を持って本作をオススメしたい。デート等で使うなら、是非「美女と野獣(2017)」を観にいきましょう!

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