“Ç”「海を飛ぶ夢」地味すぎる実話を巧みに加工!尊厳死の本質に迫る

海を飛ぶ夢(2004)
Mar adentro(2004)

海を飛ぶ夢

監督:アレハンドロ・アメナーバル
出演:ハビエル・バルデム、
ベレン・レエダetc

評価:60点

ブンブンの聴講しているゼミで、
学生が「海を飛ぶ夢」という
尊厳死を扱った映画
を持ち寄ってきて観たぞ!

ブンブンもてっきり
観たと思い込んでいたのだが、
「潜水服は蝶の夢を見る」
間違いだったようで
新鮮に観ることができたぞ!

「海を飛ぶ夢」あらすじ

実在の人物ラモン・サンペドロの
「レターズ・フロム・ヘル(地獄からの手紙)」
を基にしたドラマ。

25歳の夏に海での事故で、
下半身不随なったサンペドロは
26年の介護生活を経て、
尊厳死を決心する。

スペインでは尊厳死は禁止されている。
家族が温かく最期の日々を過ごす中、
謎の訪問者ローザの登場と弁護士フリア
の病に心が揺り動かされる…

アメナーバルの悩んだ脚本

本作は尊厳死という重要な問題を
扱っているのだが、原作が非常に
映画化し辛いものとなっている。

なんたって、主人公のサンペドロ
さんは、終始「何があっても
尊厳死するぞ!」と意気込んでおり、
魔性の女ローザが現れようと、
弁護士フリヤが重病に冒されていても
決心が変わらないのだ!

つまり、起承転結の
「転」
が弱すぎるのだ!

フツーの監督だったら、
物語に起伏を与えるために、
「尊厳死」の数分前から物語を展開し、
回想シーンでストーリーを
動かす仕組みにしがちだ。
それこそ「デッドプール」

でも
キャラクターの経歴紹介
シーンの冗長性を回避する
ために使われている。
(一応あれも難病ものだしねw)

さて、本作はあえて
そういったテクニックを
使わずに、しっかりと
「尊厳死」決心のシーンから
じゅんぐりと描く。

なので、最初は正直きつい!
長く感じる。
しかし、それこそがアメナーバルの
狙いだ。26年間介護される男の
苦しみ。社会的欲求が満たされない
苦しみを、退廃に、あえて冗長
に描かれる前半部分で追体験
できるのである。

アメナーバルの悩みに悩んだで在ろう、
この脚本捌きに感動する。

窓の用法とバルデム

本作で一番輝かしいのは
ハビエル・バルデムだ!
すっかり「ノー・カントリー」
や「007/スカイフォール」

悪役のイメージが強いのだが、
こんな地味ながらも繊細な演技も
できるんです!

全身が動かないので、
顔だけで喜怒哀楽を
表現しないといけないのだが、
バルデムの表情だけで
病気で苦しんでいる感じが
にじみ出てくる。

そして、監督のハイセンスな
計らいで、窓の外の風景に
主人公の心情を投影させ、
そのダブルパンチで
後半のストーリーに
盛り上がりとカタルシスを
感じます。

ただ、やっぱり…

こんなに、凄い作品なのだが、
やはり難しい題材だったと言えよう。
まず、主人公にフォーカスを当てすぎていて、
自分勝手に見えてしまう。
弁護士フリアと魔性の女ローザの
キャラクターが活きていない
といった問題が発生している。

そして、何よりもスペインで
「尊厳死」の許可を求める
裁判シーンが無駄になりすぎていたりする。
せめて、警察等が全力で
尊厳死を阻止するシーンが
あってもいいのではと
想った。

う~む惜しいな~

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