妻夫木聡

2021映画

『唐人街探偵 東京MISSION』メガ密のユートピア/分断される世界への処方箋

チン・フォン(リウ・ハオラン)&タン・レン(ワン・バオチャン)が日本へ降り立つ。飛行機内でドカ食いをした為、ゲリラゲリに襲われるタン・レンだったが、息をつく間もなく、妻夫木聡演じる野田昊が出現し、そのまま群れのアクションが展開される。一見、通俗ながらもこのアクション一つから滲み出るジョン・フォードの趣に感銘を受ける。総勢72名ものアジア人が彼らめがけて突進してくると思いきや、彼らそっちのけで大乱闘を繰り広げる。リュックを背負ったヲタクと思われる人はゼエゼエ言いながら階段を駆け上がり、飛び蹴りする男たちの狭間の中で、ゴミ箱を被せられた男は階段から落ちてゆく。赤のキャビンアテンダントと紺のキャビンアテンダントが階段で殴り合いをする中、飄々と闊歩する野田。「ウェルカム・トゥ・トーキョー」と観客もろとも不思議の国ニッポンへ引きづりこまれるのであります。違和感しかないトーキョー描写がメガ密空間で描かれるのだが、まさしく『静かなる男』の均等かつ繊細に押並べられていく個性の連動、群れの躍動感にノックアウトされていき、「日本っていいな」と説得されていってしまう。