感想

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【ネタバレ考察】『オールド』シャマラン最高傑作!ある日本映画のラブレターでは?

M・ナイト・シャマランといえば『シックス・センス』でどんでん返しの人のイメージがついてしまい、毎回その呪縛と闘っているような監督である。だが、実はその呪縛というのは観客の心を縛っているに過ぎず、実は彼は一貫して俺的ハリウッド映画を作り、そのねじ曲がったもう一つのハリウッド映画像が面白さに繋がっている。例えば、国際的にカイエ・デュ・シネマぐらいしか評価していない『レディ・イン・ザ・ウォーター』を例に取る。一見すると、ウンディーネ的話の翻訳や、怪物映画として失敗しているように見える。ある意味、それは正しい。あの映画には怪物はいらなかった。彼は寓話を通じて、多様性と言いつつもバラバラになってしまっている現代人を繋ぎとめようとしたのだ。宗教が、人々をあるベクトルへ向けさせるのと同様。寓話を通じて絆の温もりを描こうとした。と同時に、その絆も禍々しい側面、ある種の陰謀論的危うさをも示唆しており魅力的であった。『ミスター・ガラス』では、シャマランなりのヒーローユニバースを築きあげた。さて、『オールド』はどうだろうか?今回はネタバレありで『オールド』の謎に迫っていこうと思う。

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『恐るべき子供たち 4Kレストア版』崩したくない関係性

2021/10/2(土)より公開される『恐るべき子供たち 4Kレストア版』をリアリーライクフィルムズさん、Cinemagoさんのご厚意で一足早く観ました。ジャン・コクトーの世界をジャン=ピエール・メルヴィル(『サムライ』、『仁義』etc)がどのように映画化したのか、覗いてみましたので感想を書いていきます。

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【ネタバレ考察】『子供はわかってあげない』当事者の危機感ゼロに戦慄する『荒野の千鳥足』

沖田修一監督は深刻な内容をゆる〜く描くのを得意としている。『おらおらでひとりいぐも』では話し相手のいない黄昏に生きる老人の終焉を、イマジナリーフレンドとの掛け合いでユーモラスに描いていた。『横道世之介』では突然、「死」が浮かび上がり、『滝を見にいく』では老人が山で迷子になり生死をかけたサバイバルとなる。さて、最新作『子供はわかってあげない』はどうだろうか?田島列島の同名漫画の映画化。私は原作未読で挑んだのですが、これがトンデモナイ作品であった。

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『FRONTIER(服部正和)』彼は日本のSF映画史を変えるかもしれない

昨年、知人から服部正和監督の『FRONTIER』が面白そうだと話を聞いた。予告編を観ると、日本インディーズ映画ながらも『インターステラー』のような壮大なSF映画を彷彿させる世界観に惹きこまれ、観たいなと思っていた。先日、オンライン開催される第22回ハンブルク日本映画祭で配信されると聞いて、急遽観ました。何も知らない方が楽しめる作品な為、紹介するのが難しい作品ではありますが、今後日本映画界に世界と闘える本格SF映画が生まれるのではと思わずにはいられませんでした。というわけで軽めの感想書いていきます。

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【ネタバレ考察】『フリー・ガイ』They Did

ウォルト・ディズニー配給でありながらディズニー+行きを免れた『フリー・ガイ』。2010年代以降流行したゲーム世界映画に名を刻む作品であるが、ストーリー面でとても評価されている。微妙に忙しく、中々観に行く時間が取れなかったのですが、これは劇場で観た方が良さそうだと思いTOHOシネマズ海老名に行ってきました。監督のショーン・レヴィと言えば、『ナイト ミュージアム』シリーズや『インターンシップ』、『リアル・スティール』といった年間ベスト級でないものの気楽に楽しめる娯楽映画の名匠。その名に恥じず、今回もNice Guyな映画を作ってきました。今回はネタバレありで語っていきます。

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【アフガニスタン映画】『カブールの孤児院/The Orphanage』アフガニスタン、インドとソ連に邂逅

イスラム原理主義武装勢力タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧した。ガニ大統領が国外逃亡し、それに伴い多くのアフガニスタン市民が国外逃亡しようと輸送機に押し寄せている状況がニュースで流れている。今回紹介する『The Orphanage』監督であるShahrbanoo Sadatも現在国外脱出を試みている状態である。MUBIにて『The Orphanage』が配信されているので、今回感想を書いていきます。

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【MUBI】『5月の後』結局、結局、社会のレールに乗ってしまうのさ

MUBIにオリヴィエ・アサイヤスの『5月の後』が来ていました。1960年代、学園闘争は世界各地で発生していた。そして70年代になると、結局大人や社会によって潰され、「暴力で世界は変えられない」と悟ったのか若者はそれぞれの道を歩み始め、運動は下火になっていった。そんな70年代前半、運動にのめり込んでしまった者のイタさを描いた青春映画だ。その前に、5時間30分にも及ぶテロリストの活躍を描いた『カルロス』を撮ったアサイヤス監督が少し肩の力を抜いて作った、暴力の内側に入ろうとして外側に押し出される者による青春の蹉跌。これがとても面白かった。

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『みんなのヴァカンス』ギヨーム・ブラックは『おおかみこどもの雨と雪』がお好き

夏ですね、大人も夏休みですね。夏といえばバカンス映画ですね。数週間の休暇を取る文化があるフランスでは、毎年のようにバカンス映画が量産されている。カイエ・デュ・シネマの批評家もバカンス映画には目がなく、年間ベストにねじ込む傾向がある。さてエリック・ロメールはもはやおらず、ジャック・ロジエも映画を作らなくなってしまった時代のバカンス映画のスター監督は誰か?恐らく、ギヨーム・ブラックだろう。彼の作品は、ジャック・ロジエ映画に登場する女々しい男の目線でナヨナヨしたバカンス映画を撮る傾向がある。この気持ち悪さが癖になる監督だ。さてそんな彼の新作『À L’abordage』。フランス語で、「搭乗」、「偶発的な衝突」、「船が海岸に近づく行為」を示す言葉とのこと。ワンナイトラブをしてすっかり惚れ込んだ男が、彼女のいる場所に近づく。一緒について行った友人が別の女と邂逅、親密になると言う内容を暗示したタイトルになっているのであろう。ということで観てみました。