2019映画

【OAFF2021】『ブラックミルク』ゲル生活のかけら

ドイツで長年生活したウェッシ(ウィゼマ・ボルヒュ)がモンゴルの妹オッシ(グンスマー・ツォグゾル)のいるゲルに帰郷する。妹は伝統的なルールに従って慎ましく生きるが、そのことでドイツ生活に慣れているウェッシと軋轢が生まれてしまう。監督の自伝的内容なのだが、撮影が難航しているためか断片的ヴィジュアルが並べられているだけだ。本作は恐らく、外国かぶれしてしまいモンゴルの伝統に溶け込めない自分を見つめ直す映画であり、『ブルックリン』のような心理的変化が紡がれることを期待していたのですが、ひたすらゲルの慎ましい伝統を映すだけで、映画祭に来る人のオリエンタリズムを満たすことだけに全振りしているのが致命的だと思う。

2021映画

【アカデミー賞】『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』タコvsサメ世紀の戦い

人生に疲れた男クレイグ・フォスターは精神を癒す為、南アフリカの海に毎日潜ることにする。彼の眼前には見たこともないような美しさが広がっており、彼は海の神秘に取り憑かれていく。

そんな中、彼はタコと出会う。殻を全身に身につけて防御したり、獲物を仕留める為に巧妙な技を駆使するタコに魅了された彼は、タコとコミュニケーションを取り始める。ただ、間合いが非常に難しく、中々思うように対話ができない。しかし、やがて彼の手にタコが触れコンタクトを取り始めた。これにより二人は友情や愛情を超えた関係に発展していく。

2021映画

【ネタバレ考察】『ブレイブ 群青戦記』高校生よこれは戦争だ!死と隣り合わせなのだ!

冒頭、よくある大衆映画にありがちな長い前置きを大幅にショートカットして、タイムスリップを強制発動させる。そして高校生の前に、落ち武者のような軍団が右から左から雪崩のように押し寄せて来て、高校生を皆殺しにする。そうです、時は戦国時代だ。情け無用弱肉強食の世界。高校生という安全圏は存在しない。原作はどうかわかりませんが、ここで本広克行は部活動を映画的に魅せるオーディションを開始する。映画として描いた際に、学校の華である野球部やサッカー部といった球技は魅力的に映すことが難しい。そこでサッカー部を無惨に抹殺する。そして野球部を球技担当として採用する。野球部にはボールとバットがある。これで戦ってもらうことにする。そして、格闘技系を硬め、その中心に科学部を配置することで文化系要素を追加するのだ。武器として映えないテニス部は潔く留守番させ、現代に戻るための装置作りの要員として動かす。

2021映画

【アカデミー賞】『ミナリ』アメリカン・ドリームの終焉※ネタバレ

ジェイコブ(スティーヴン・ユァン)がど田舎にあるトレーラーハウスと土地を買い、家族の反対を押しきって移り住む。彼は10年間ヒヨコ鑑定士として汗水流してきた。いい加減アメリカン・ドリームを掴み子どもに良いところを魅せたいと考えている。そのエゴが暴走し、病弱な息子デビッド(アラン・キム)を抱えているのに病院から1時間もある土地にしがみつき、家事は妻モニカ(ハン・イェリ)やおばあちゃんスンジャ(ユン・ヨジョン)に任せっきりだ。

2021映画

【アフリカ映画】『Munyurangabo』:ミナリの監督がルワンダで叫ぶ「殴るより歩け!」

彼らはヒッチハイキングしながら旅を続ける。その道中Sangwaは故郷に戻ってくる。3年間家出していた彼に対して母親は抱擁するも、父親はいい顔をしない。Sangwaのナップサックにマチェーテが入っていることや、Ngaboの正体に不信感を募らせている。Sangwaは数時間だけ滞在する予定だったのだが、なんだかんだで泊まることになり泥を塗ったり、水を汲んだりして家事を手伝うことになる。

2021映画

『クリシャ』クリシェのクリシャ

本作は、謎の訪問者クリシャにそのクリシェを纏わせることで、固い絆で結ばれているようで脆い人間の心理を暴き出している。冒頭、5分以上に渡る長回しで、クリシャの帰還が描かれる。車から降り、ブツブツと独り言を発しながらベルを鳴らす。しかし、誰も出ない。どうやら家を間違えたようだ。クルッと振り返ると、目をカッと開いた彼女がカメラの方に向かって歩いてくる。その異様な佇まいから不穏な様子が滲み出る。そして家の中に入るのだが、温かく迎えてくれるようでどこかよそよそしい家族が映し出される。よくよくみると、彼女の右手人差し指には包帯が巻かれている。家族は、家の中で団欒としているが、激密な空間の中で好き勝手に動き回り、騒々しい。息苦しさが漂っている。そんな中、クリシャは独り七面鳥の丸焼きを作り始めるのだ。家族は手伝うよと言いつつも、何も手伝っておらず彼女を放置する。