2021映画

『THE ROAD』俺の頭の中では完璧な映画なんだ!byカザフスタンの映画監督

レフ・トルストイの「アンナ・カレーニナ」を現代カザフスタンに置き換えて映画化した『Chouga』が2010年のカイエ・デュ・シネマ年間ベストにて9位に選出されたことからご存知の方も多いでしょう。しかし、カザフスタン映画だけあってか彼の作品の観賞難易度はSSRである。インターネットで調べるとカザフスタンのタルコフスキーというあだ名がついているらしくめちゃくちゃ面白そうなのでここ数年ずっと探していてついに見つけました。フランス版MUBIで発見しました。しかも東京国際映画祭で上映された『ある学生』 も配信されていました。ただ、字幕はフランス語字幕のみ。こういう時、フランス語やっていて良かったなと思う。さて今回紹介する『THE ROAD』はNHKが製作に関わっているにもかかわらず映画祭で上映されたきり日本公開されなかった幻の作品です。これがとてつもなく傑作でありました。

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【ネタバレ】『Go Go Tales』ウィレム・デフォーのイケイケ物語!

正直、『アンカット・ダイヤモンド』が登場した今考えると、本作の修羅場修羅場の釣瓶打ち映画としてはワチャワチャし過ぎてそこまで評価は高くない。ましてや『チャイニーズ・ブッキーを殺した男』を引用しているという点でも、どうしてもジョン・カサヴェテスの舐めるような撮影に劣る部分がある。しかし、それでもウィレム・デフォーの常時ガンギマリな演技は大迫力である。

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【ネタバレ】『名探偵コナン 緋色の弾丸』工藤新一のシン・新幹線大爆破

本作は、今まで観てきたコナン映画の中でトップクラスにぶっ飛んでいる作品と言える。冒頭から、「WSG ワールド・スポーツ・ゲームス」のセレモニーで鈴木園子の父が誘拐される事件が勃発する。すると待ってましたと言わんばかりに吉田歩美、円谷 光彦、小嶋 元太の三人、通称:少年探偵団が先陣を切って推理を始める。いつもは食い意地係としてしか機能していない元太が、鰻の匂いを嗅ぎ分ける特殊能力を使って父を救出するファインプレーを魅せつけるのだ。こうしていくうちにFBIや赤井一族を巻き込んだ陰謀戦が始まる。

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【ネタバレ酷評】『茜色に焼かれる』激情に不幸を過剰積載していく日本閉塞感ものの最終兵器

夫(オダギリジョー)が交通事故で亡くなるものの、謝罪なしに政治的にもみ消されて早七年のところから始まる。そこから展開されるのは、新型コロナウイルスによってカフェが廃業となり、妻・田中良子(尾野真千子)は量販店で花を売りながらマネージャーにパワハラされ、風俗店でも客から暴言を吐かれながら日銭を稼いでいる。息子・純平(和田庵)は学校で先輩にイジメられている。

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『ペトルーニャに祝福を』北マケドニアの福男祭に女が乱入!?そのわけとは…?

主人公ペトルーニャ(ゾリツァ・ヌシェバ)は32歳フリーター。毒親に育てられた彼女は自己肯定感が低く、大学を出たにもかかわらずウィトレスのバイトしかしていない。そんな彼女に母親ヴァスカ(ビオレタ・シャプコフスカ)は面接を受けろと圧をかける。だが、渋々面接を受けるとセクハラに遭ってしまう。

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【ネタバレ考察】『カランコエの花』先生よ、それは責任を生徒に押し付けているだけだ

何気ない高校のとある教室。生徒たちは談笑していた。どうやらイケメン物理教師が来るらしい。女子グループはソワソワとしていた。そんな中、突然担任の教師がLGBTについて講義を始めた。何故かこのクラスにだけ。次第に、その違和感は「このクラスにLGBTの人がいるかもしれない」と疑心暗鬼になりいがみ合いが始まってしまう。

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【CPH:DOX】『MISHA AND THE WOLVES』あの名作はフィクションだった

皆さんは「少女ミーシャの旅」をご存知だろうか?ベルギーの作家ミーシャ・デフォンスカの自伝的小説で、ナチスに親を奪われた彼女が狼に助けられながら逃げる感動的な話である。18ヶ国語に翻訳される程のベストセラーとなり、2007年には『ミーシャ/ホロコーストと白い狼』という題で映画化された作品だ。

しかしこの本は自伝ではなく、実はフィクションであった。本ドキュメンタリーは、彼女の本を出版したジェーン・ダニエルがことの真相に辿り着くまでの過程をドラマティックに描いたドキュメンタリーである。恐らく、今後劇映画化させるであろう壮絶な内容である一方、ネタバレ地雷原なので、ここでは最小限に留めて感想を書いていきます。

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【CPH:DOX】『プレジデント/PRESIDENT』正義を蹂躙する不正義

国民の不満が爆発し2017年にクーデターが勃発し、市民はムガベ大統領を倒した。この国に平和が訪れたかに思えた。本作の始まりは、時期大統領戦の中盤戦から始まる。若きリーダー、ネルソン・チャミサはムガベ大統領時代の政治腐敗から脱却し、人々をよき方向に導こうとしている。積極的に、各地を巡り演説をしている。そのカリスマ性もあって大人気だ。

しかし、既に腐敗しきっているジンバブエではトップが変わっただけではそうそう簡単に悪事から足を洗うことができない。選挙の投票結果をしっかり監視していないと、票が盗まれたり、短時間にありえない数の得票が集まったりするのだ。

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【MUBI】『荘園の貴族たち/MALMKROG』貴族のマウント合戦に参加しないか?

本作は偶然にもコロナ禍とリンクしており、前作『シエラネバダ』では狭い部屋に何人もの人を密集させてルーマニア史における世代断絶によるヒリヒリとした会話と遅々として進まない物事が描かれてきたのに対してこの『MALMKROG』では終始ソーシャルディスタンスを取りながら同様の属性違いによる意見の対立とマウント合戦が描かれていく。間合いを取り、終始絵画的構図を作っていく人間の配置の美学に圧倒される一方で、展開される哲学的な議論は非常に難解で一度観ただけではわからないところも多い。内容と歴史背景に関しては他の方に考察を譲りたいと思う。