『サバイバルファミリー』関西が豪雨被災!東日本の民よ!これを観て備えよ!

サバイバルファミリー(2017)
SURVIVAL FAMILY(2017)

監督:矢口史靖
出演:小日向文世、深津絵里、
泉澤祐希、葵わかなetc

評価:80点

昨年見逃した矢口史靖の『サバイバルファミリー』。ネットフリックスにアップされていたので、観てみたらこれが傑作でした。そして、西日本の豪雨による土砂崩れ、洪水で陸の孤島と化している今だからこそ観たい作品であった。

東京新聞:豪雨の安否不明なお60人超 政府、激甚災害指定へ

The Japan Times:Water outages continue in flood-hit areas across western Japan, as death toll tops 170

『サバイバルファミリー』あらすじ

ある日、電気がなくなった。携帯電話も車も、何もかも電化製品が使えなくなった。一日、一週間、一ヶ月全く電気が使えない。家族の絆が冷え切っている鈴木家は、おじいちゃんがいる鹿児島へ自電車に乗って向かう…

矢口史靖版『ブラインドネス』

矢口史靖は東宝に電通、時にはフジテレビと大企業をバックにつけながら、娯楽性と自分のやりたいことを両立させるのが上手い監督だ。いつも予告編は食指が動かないのだが、観るとこれが傑作だったりする。本作はそんな矢口史靖映画の中でもトップクラスの傑作であった。昨年観なかったことを後悔した。

本作は、『ブラインドネス』が人々から視界を奪った後の世界をリアルに描いたように、《電気》を奪った世界を徹底したリアリズムで描いている。ある日、世界から電気が消える。テレビやスマホはもちろん。電池で動く懐中電灯や時計すら動かなくなる。最初の数日こそ、人々は会社や学校に向かう。サラリーマンは暗闇でも仕事をしようとする。高校生は、自習に大喜びする。ただ、それも一週間、一ヶ月続くと人々は焦る。札束の価値は0となり、水や米の価値がインフレする。

矢口史靖は東日本大震災時の日本人のサバイバル生活を入念に研究しただろう痕跡が随所に見舞われる。例えば、アメリカやベネズエラだったら銃を持って平気で、他者から食料を強奪するであろう非常事態にも関わらず、粛々と食料の売買が繰り広げられる。高級品をジャラジャラ身につけたサラリーマンも、米屋に取引を断られようなら悲しげに去っていくのだ。

確かに、自転車強盗未遂や水の窃盗は起きれども、ここまで平和な日本のサバイバル生活は外国人が観たら目を丸くするだろう。でもこれが日本人だ。自分の身を守るので必死な日本人も最低限の秩序だけは守る異様さ。これは東日本大震災でよく知っていることだ。

また、今回の豪雨では、大雨・洪水警報がなるまで、学校は休校にせず、多くの企業は休業にしなかった。ギリギリまで仕事をしようとする、異様な光景はまさしく映画の中と同じだ。地震でインフラが壊滅しているのに、仕事をしようとする姿を矢口史靖は猛烈に皮肉っている。

見事な成長譚

そして本作はきちんとロードムービーという、旅を通じて成長する物語の王道を斜に構えることなく描ききっている。冒頭、しっかりと家族の不協和音、都会人の潔癖を描く。スマホやテレビが友達な都会人は家族とのコミュニケーションも少ない。主婦ですら魚を捌くことができない。親父は、『セールスマンの死』のように子供達に毒づく。

それが極限状態で、虫や植物、そして動物とのふれあいを克服する。そして、今まで自分の周りに作ってきた壁を一つ一つ壊していく。不器用なまでにダサく痛い家族なんだけれども、決して綺麗な成長は魅せないんだけれども、彼らが鹿児島に到達する頃に魅せる姿は美しくカッコ良かった。

東日本は幸いにも豪雨の影響が少なかったのだが、いつ関西と同様の事態に陥るのかわからない。もしかしらた大地震で、同様の極限状態に陥る可能性もある。なので、東日本の民は、是非とも観て欲しい。

予告編は映画ファン程反吐が出るくらい通俗なのだが、これは傑作。是非まだ観ていない方は挑戦してみてください。

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