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『四月の永い夢』モスクワ国際映画祭2冠!中川龍太郎監督に注目せよ!

『四月の永い夢』モスクワ国際映画祭2冠!中川龍太郎監督に注目せよ!

四月の永い夢(2017)


監督:中川龍太郎
出演:朝倉あき、三浦貴大、川崎ゆり子etc

評価:75点

『走れ、絶望に追いつかれない速さで』で注目された中川龍太郎最新作『四月の永い夢』。第39回モスクワ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞とロシア映画批評連盟特別表彰の2冠に輝き、ブンブンの周りの映画超人からも、「これ大傑作だよ!今年ベストテンに入れたい作品だ!」と賞賛されていたので、昨日初日舞台挨拶上映に行ってきました。何も予備知識を入れず、予告編すらシャットアウトして観たところ、これが面白い作品でした。

『四月の永い夢』あらすじ

3年前に、ある事情で教師をやめた滝本初海。彼女は、近所のお蕎麦屋でアルバイトしている。しかし、お蕎麦屋が店をたたむこととなり、求職活動をすることになった。しかし、あまり求職活動する気が起きずダラダラと毎日を過ごしていた。というのも、最近届いた一通の手紙の生で心の整理がつかないからだ。そんなある日、映画館で『カサブランカ』を観ていたら、元教え子の楓と出会い…

アンニュイをほんのり陽光で包んだ

『走れ、絶望に追いつかれない速さで』の時に、中川龍太郎は陽光の使い方が上手い。観客の心にまで光が差し込む映画を撮るなと感じていたが、どうも本作でこれは作家性だということに気付かされた。本作は、過去に囚われ、アンニュイな日々を抜け出せずにいる女を陽光がそっと手を差し伸べることで乗り越えていく話だ。

冒頭、桜道に立つ主人公・滝本初海の肖像が映し出され、「世界が真っ白になる夢を観た」というセリフから始まる。彼女は3年前、とある事情により教師をやめ、お蕎麦屋で過去を思い出さないようにして行きていることがその後すぐに分かる。彼女にとって今の生活は、白紙そのもの。平和ではあるが、未来がない。純潔であるとともに空虚な世界を彷徨っている。

そんな彼女に4つの出来事が同時に発生したことで、彼女の白紙に色がついていく。

1.3年前に亡くなった恋人からの手紙が送られてくる
2.蕎麦屋の常連さんに手ぬぐいの個展のチラシをもらう
3.蕎麦屋まさかの閉店
4.教え子にばったり遭遇

過去を忘れたいのに、よりによって元恋人からの手紙が届き、しかも恋人の両親から返信を求められてしまったことで、彼女は苦しむ。ただ、決してその苦しみは表には出さない。いや出さないようにしている。そんなデリケートで今誰にも自分のプライベートゾーンに入ってほしくない状況なのに、明らかに自分のことが好きだと思われる常連さんから個展のチラシをもらい、行かないといけなくなる。そして、元教え子にばったりと出会ってしまい。しかも成り行きで、自宅に泊める羽目となってしまう。おまけに、安全圏だと思っていたお蕎麦屋が閉店することとなり、求職活動をしなくてはいけず、友人から職を紹介されるが、それが学校の教員だったりする。

通常の映画であれば、陰鬱なイメージ、そして不協和音により彼女の心のフラストレーションを前面に打ち出していくのだが、中川龍太郎は真逆の方法を取っている。とにかく、過去に囚われアンニュイな生活を抜け出せずにいる滝本初海を救ってあげようと、無数の陽光、淡く美しい陽光でもって救ってあげるのだ。

その様子を効果的に魅せているのが、滝本初海に恋する常連さんこと志熊藤太郎の手ぬぐい。20種類もの素材を組み合わせ、無限の色を表現できる彼が、真っ白い布に、色を丁寧に浸透させ、花火のように美しい手ぬぐいを生み出していくのと滝本初海の心はシンクロする。丁寧に丁寧に幾重にも層をなした音と光が、彼女の心の白紙を豊潤な色彩で満たしていくのだ。

そして、伝統工芸には《侘び寂び》があるように、本作にも《侘び寂び》がある。何故、3年前の恋人の死が教員を辞めるほど滝本初海の心を動かしてしまったのか、教え子に起きたあの事件はなんだったのか、常連さんとの情事はどうなったのか、様々なことが宙ぶらりんのところで終わる。本作は恐らく、他の監督なら残り30分足して描いたであろうことがぽっかりと抜け落ちている。これこそが本作の《侘び寂び》であり、観客はその行間を鑑賞後にじっくりと埋めていく仕組みとなっている。決して全てを語らない。そこに美しさがあるのだ。

ブンブンは今回、中川龍太郎監督が織りなす世界に完全にノックアウトされました。舞台挨拶で、本作を撮ったきっかけについて彼は、「ネパールに行った時、手紙を書こうとしたら、このアイデアが浮かんだんだ」と語っていた。海外旅行によって感じた神秘的世界を、ここまで美しく形にする。これは次回作も期待できそうです。また、主人公・滝本初海を演じた朝倉あきの映し方が本当に綺麗で、ブンブンも三浦貴大が演じた常連さん同様、ドキドキさせられっぱなしでした。

現在、新宿武蔵野館にて上映中。是非劇場でこの詩的で、美しき世界を堪能してみてください。

P.S.


本作を観た後、無性に老舗お蕎麦屋さんに行きたくなったので、今月で閉店する長寿庵という店に行き、カツ丼を食べました(ソバじゃないんかい!)。美味しかったです。

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