『アレッポ 最後の男』この世界の片隅にある地獄

アレッポ 最後の男(2017)
原題:آخر الرجال في حلب
英題:LAST MEN IN ALEPPO

監督:フィラス・ファイヤド

評価:60点

第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされるものの、制作陣がアメリカ入国を拒否されてしまった哀しい境遇を背負つ作品『アレッポ 最後の男』を観ました。アレッポ情勢を描いた作品と言えば、『ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊』で描かれた衝撃の地獄絵図を思い浮かべるが果たして…

『アレッポ 最後の男』概要

内戦中のアレッポにカメラが潜入した。ホワイトヘルメットの活躍、そして日々爆撃に怯える地元民をカメラが捉えた。

長編版『ホワイト・ヘルメット』

正直、短編ドキュメンタリー『ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊』と大差ありません。切り口は全く同じなので、単純に長編に引き伸ばしたような作品だ(監督は違うんだけれどね)。ただ、本作を観ると、『この世界の片隅に』が「ぬるい」、「耐えるだけで成長が無い」と批判される理由が少し分かる。

今や平和ボケ真っ最中の日本。しかし、世界には毎日強烈な爆撃に悩まされている場所があるのだ。アレッポでは、2011年のアラブの春が飛火し起きたシリア騒乱が泥沼化し、政府軍と反体制派の抗争が過激化。そこにロシアが介入したことにより、毎日激しい爆撃が行われ、街は壊滅状態となっている。

そんな地獄絵図の中、ボランティア団体ホワイト・ヘルメットが次々と人々を助ける様子が描かれている。ホワイト・ヘルメットは政治的兼ね合いで批判されることもあるのだが、この中ではそういった話は抜きにして、淡々粛々と人助けをする様子が描かれている。良くも悪くも、現場を捉えようとしている。

そして、そんな地獄の中、人々は金魚を買い、僅かな水の中で一生懸命育てようとする場面が映し出される。そう、これは、アレッポ版『この世界の片隅に』だったのだ。

『ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊』と比較してしまい、もう少し深くまで切り込んでほしかったなとは思う。戦場を撮れば、どんな作品であれカタルシスが生まれる。ある種戦争ポルノでは無いかと思ってしまうのだが、それでもこれは平和ボケした人に真実を伝える、大切な報道だと言えよう。

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