【ネタバレなし】『フロリダ・プロジェクト』ウィレム・デフォーの愛と哀に涙

フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017)
The Florida Project(2017)

監督:ショーン・ベイカー
出演:ブルックリン・プライス、
ウィレム・デフォー、ブリア・ヴィナイテetc

評価:85点

全編iPhoneで撮影されたトランスジェンダー映画『タンジェリン』で注目を集めたショーン・ベイカー監督が、低所得者向けの公営住宅=プロジェクトにも入れない人々を、6歳ぐらいの子どもの目線で描いた作品。第70回カンヌ国際映画祭の頃から、ポップで素敵な映像に惹かれ楽しみにしていました。日本公開は5/12(土)ですが、一足早く拝見したので感想を語っていきます。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』あらすじ

フロリダ、ディズニーワールド近くのモーテル《マジック・キャッスル》。ここには、低所得者向けの公営住宅=プロジェクトにも入れない人々が暮らしていた。6歳の女の子ムーニーは同じモーテルに住むお友達と毎日冒険に満ちた暮らしをしていた。子どもたちは知らなかった、自分たちが置かれている状況を、、、

ウィレム・デフォーの愛と哀に涙

本作は、カルト映画専門の映画会社A24配給案件でもあるので期待値高めに鑑賞したのだが、案の定大傑作であった。通常、この手の作品は貧しい=悲しいを結びつけて描きがちだ。しかし、本作は底抜けに明るい。純粋無垢で《社会》を知らぬ子どもたちの目線で8割物語が進むので《悲哀》なんてものは皆無だ。それだけに、涙が出てくる。

その《明るすぎて哀しくなる》という構造を強調させるために、本作に映る景色はまるで魔法の世界のように美しくなっている。天気は雨など寄り付かないような晴天。周りの建物は、赤、オレンジ、ピンクと暖色に包まれており、草木の緑がより一層フロリダの暖かさを強調する。まさにディズニーワールドよりも魔法と希望に満ちた世界なのだ。

そこで飛び跳ねる子どもたち。その様子は、我々の幼少期を思い出させる程のノスタルジーがある。だから観ていて楽しい。しかし、その様子を呆れつつも温かく見守るウィレム・デフォー扮するモーテル管理人やムーニーの母親の目線になった途端、非常に恐ろしい光景が露見し、背筋が凍る。

例えば、子どもたちが遊んでいるところにおじさんがやって来る。ペンキ塗りをしているモーテル管理人がそれを目撃し、慌ててそのおじさんを子どもの見えない場所に連れ出す。そう、彼は変態だったのだ。

モーテル管理人は、モーテルが危険な場所だと知っている。なんとかして子どもたちを救いたいと思っている。子どもたちに愛情すら抱いている。しかし、たかが管理人。何もできない。できるとすれば、子どもたちの危険を取り除いてあげる、子どもたちがトラウマを抱えないように騒動から引き離す。それだけだ。

終始ポーカーフェイスでやる気のなさそうな管理人。でも時折溢れる哀愁の顔。それを観ると泣けてくる。これはアカデミー賞助演男優賞ノミネートも納得の演技といえる。

サブプライムローン問題が勃発し、人々が住居を終われ、プロジェクトにすら入れなくなっているアメリカ。そこで人々の生活を痛烈に切り取り、そして尚且つ童心に返ったかのような気持ちで楽しめる本作は今年最高の一本であろう。

本作の終着点までユニークで恐ろしく、でも楽しい。そんな作品『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』は5/12(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷他にて公開。是非美しくも哀しい世界に足を踏み入れてみてください。

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