【解説】『ジャコメッティ 最後の肖像』歩く男Iを作る映画ではないが彼の彫刻観が分かる一本

ジャコメッティ 最後の肖像(2017)
FINAL PORTRAIT(2017)

監督:スタンリー・トゥッチ
出演:ジェフリー・ラッシュ、アーミー・ハマー、
クレマンス・ポエジーetc

評価:60点

『ハンガー・ゲーム』『トランスフォーマー

』『美女と野獣

』等ハリウッド大作によく出ている脇役の大御所スタンリー・トゥッチ。

彼がジャコメッティの伝記映画を撮った。実は、トゥッチが監督を務めるのは初めてではない。『シェフとギャルソン、リストランテの夜』『インポスターズ』『Joe Gould’s Secret』『Blind Date』の4本で監督を務めたことがある。しかし、彼があのアルベルト・ジャコメッティを描くとは意外だ。しかも、ベルリン国際映画祭コンペ入りを果たしているだけに俄然興味が湧き、TOHOシネマズシャンテにて観てきた(7〜8割埋まる程大盛況)。

『ジャコメッティ 最後の肖像』あらすじ

1964年のパリ。アルベルト・ジャコメッティの友人である作家のジェイムズ・ロードは彼から肖像画のモデルを頼まれる。ものの2時間で終わるとのことだったので帰国前にと快諾するロード。しかし、ジャコメッティはなかなか絵を完成させることができず…

彫刻の映画ではありません

ジャコメッティの伝記映画とはいっても、本作はジャコメッティが亡くなる直前に手がけた、ジェイムズ・ロードの肖像画についてのみフォーカスを当てている。だから、『歩く男Ⅰ』『女性立像Ⅱ』『大きな頭部』等の製作背景観たさに来た方は漏れなくがっかりするだろう。

ただ、本作は肖像画とはどういったものか、ジャコメッティにとって彫刻とは何かをしっかり描きこんでいる。

まず、元々肖像画とは、写真の代わりであった。しかし、写真や映画の登場で肖像画の意義が1964年の時点では失われていた。ジャコメッティはだからこそ、肖像画の枠組みを越えようとした。ゴダールが映画の概念を毎度壊していくように。

しかし、概念の破壊は容易いことではない。完璧を求めるがごとく、何度も描き直す。気が乗った時でないと肖像画と向き合うことはできない。それだけにストレスは当然溜まる。スタンリー・トゥッチは本作で、ジャコメッティはストレスを癒す存在として粘土彫刻が活用されていたという説を映画で唱えたのだ。インスピレーションを掘り起こすように粘土を弄り、人を形成していく。作品が作れない自分の怒りを粘土にぶつける。そしておもむろに粘土を触り、発見を見つけようものなら、カフェに行くのを中断して肖像画に挑む。

そう、これは決してジャコメッティの彫刻を扱った映画ではないのだが、ジャコメッティにとって彫刻とは何か。ジャコメッティ初心者の我々が抱くジャコメッティへの先入観を破壊していく映画だったのだ。

遅刻魔に予定を守らせる方法

また、本作は完璧主義だったり、納期遅刻魔に対して、如何に締め切りを守らせるかを教えてくれる。ジェイムズ・ロードは残念ながら、ジャコメッティに引きづられて納期を守らせることには失敗している。しかし、意を決してラストに行ったアレは英断と言えよう。なので、さりげなくビジネス映画でもあった。

まあ、映画としては1ヶ月後には忘れてしまいそうな可もなく不可もない作品だが、観てよかった。

美術に興味ある方は是非TOHOシネマズシャンテで本作を観ることおすすめします。

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