【ブンブンシネマランキング2017】新作洋画部門第1位は『希望のかなた』カウリスマキ引退するってよ!

5.ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(2016)

鑑賞環境:角川シネマ新宿
監督:ジョン・リー・ハンコック

今年、一番の意外な傑作。本作公開前から町山智浩を始め、いろんな方が「マクドナルドを乗っ取った男の話」と評しており、てっきりマクドナルド兄弟からブランド名を奪取したレイ・クロックを悪役として描いた作品だと思っていた。しかしながら、本作はマクドナルドの歴史を実に客観的に描写し、そのままアメリカの資本主義の本質を突くレベルにまで昇華させた凄まじい作品だ。

本作を観ると、マクドナルド兄弟のマネジメントスキル、リスク管理能力のなさに自業自得感を覚える。そしてレイ・クロックは、なかなか夢が叶えられずにいたが、徹底した努力、積極的な視点周り(しかも従業員と一緒になって仕事しているではないか)ときめ細かい運動でアメリカンドリームを手にしていく様子は熱かった。

従業員の洗脳方法がブラック企業っぽいところもあるが、やはりレイ・クロックに魅力を感じてしまう。マクドナルドよりもファーストキッチン派なブンブンですら、マクドナルドに行きたくなったぞ!

4.ありがとう、トニ・エルドマン(2016)

鑑賞環境:ヒューマントラストシネマ有楽町
監督:マーレン・アーデ

ドイツ版『男はつらいよ』は非常に重厚なドラマだった。親父ギャグばかり言う父親とキャリアウーマンの娘の間で巻き起こる対立から、感情を押し殺して「強い女」を演じなければいけない社会の女性差別、そして搾取する側とされる側のEU構造が見えてくる。この深い深淵にブンブンはのめり込みました。また自分が完全にトニ・エルドマンと同じ立場で、しょっちゅう実家に帰ってきては妹にダル絡みをする男なので、トニ・エルドマンの哀愁に自分と重ね合わせて観ました。

3.AMERICAN HONEY(2016)

鑑賞環境:DVD
監督:アンドレア・アーノルド

カンヌ国際映画祭で女性監督アンドレア・アーノルド監督が3度目の審査員賞を獲った作品にも関わらず、未だに日本公開の目処がたってない不遇の作品。しかしながら、今年社会人になったブンブンの心を鷲掴みにした作品だ。異世界、ユートピアを夢見て家出をしパリピの集団に混ざった少女。現実を2時間40分かけて受け入れていき大人の女性へと進化していく彼女、2時間40分後彼女が人生を振り返ったときの切なさが猛烈にステキ。撮影の美しさもあり、もう3度は観ている大傑作だ。話としては『千と千尋の神隠し』に近いものを感じるだけに日本公開を強く希望します。

2.レゴ バットマン ザ・ムービー(2017)

鑑賞環境:TOHOシネマズ 日本橋
監督:クリス・マッケイ

今年一番驚いた作品。公開前に吹き替えをお笑い芸人の小島よしおが務め、しかも持ちネタを披露するとのことで映画ライターのヒナタさんが署名運動を始める炎上っぷりを魅せた本作。しかし、蓋を開けてみれば、小島よしおの演技が「えっ本当に小島よしお?」と思うほどロビンになりきっていた。そして物語も正直『ジャスティス・リーグ』なんかお呼びじゃない。個人的に『ダークナイト』より上の大傑作だった。承認欲求の塊であるバットマン。しかしゴッサムシティから悪がいなくなり、心に大きな虚無が生じる。ジャスティス・リーグからもハブられているバットマンがウザキャラ・ロビンを養子として迎え入れる羽目になることで、ホンモノのヒーローへ、いやそして父になる。これを大人も子どもも爆笑のギャグの応酬に、レゴならではの描写まで織り交ぜているので、まさに職人技と言えよう。仕舞いには上映時間も短いのでブンブン大満足でした。

1.希望のかなた(2017)

鑑賞環境:難民映画祭
監督:アキ・カウリスマキ

監督にありがちな辞める辞める詐欺だと思われるが、一応アキ・カウリスマキ引退作。『ル・アーブルの靴みがき』に次ぐ難民映画なのだが、これがまさに職人技だった。シリア難民と妻と別れ一念発起した冴えないおっさんの物語が微妙に交差し合う前半場面は、『海は燃えている』を彷彿とさせる。難民問題がいか遠いようで近い問題かをゆる~い間で包む。そして二人が出会ったとき、まるでジェットコースターのように抱腹絶倒なギャグギャグギャグのスパークリングで圧倒してくる。てっきりいつものカウリスマキ映画と思いきや、シリア難民を匿う部屋が『アンネの日記』を意識した作りになっていてぞっとする。そう、これは難民映画なのに爆笑のコメディ、しかしアキ・カウリスマキの「怒り」に満ちた作品だったのだ。『過去のない男』に出てきたバンドのマルコ・ハーヴィスト&ポウタハウカ(Marko Haavisto&Poutahaukat)も登場しているだけに今年サイコーの作品であった。

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