【ブンブンシネマランキング2017】旧作邦画部門第1位は『乱』遂に黒澤明と和解

2017年ブンブン映画ベストテン
(旧作邦画編)

今年の旧作邦画は、観逃した新鋭監督初期作。富田克也や大崎章、深田晃司といった監督の観逃した作品を観ていきましたよ。それではベストテンを発表していきます。
※青下線をクリックすると各作品のレビューが観られます。

10.僕たちは世界を変えることができない(2011)

鑑賞環境:Netflix
監督:深作健太

大学生時代に観ていたら、そんなに高い評価はしていなかっただろう。深作欣二の息子が撮った青春映画。大学生の誰しもが通る痛痛しさを120%描きだす。パリピなサークル運営者が軽い気持ちでカンボジアに学校を建てるボランティアを始める。大学生の周りの大人は優しい。簡単に学生を持ち上げる。しかしながら、結局、カンボジアに学校建てたところで、先生はいないし、家庭の事情で学校に通う生徒は村にあやどいない。ボランティアはタダではない。小学校の道徳の様な簡単な話ではなく、ビジネスとして成功してこそ初めてボランティアとして意味を成す。このキツイ真実に辿り着くまでの余りに痛々しい愚考の数々の生々しさに私はノックアウトされた。これは、高校3年生に観て欲しい作品。大学という万能感に溺れてしまう魔空間をよく描けていた。

9.A(1998)

鑑賞環境:DVD
監督:森達也

地下鉄サリン事件、オウム真理教。私の世代なのだが、当時のことはよく覚えていない。高校時代、テスト前に勉強そっちのけで、ダチとオウム真理教の布教アニメをyoutubeでゲラゲラ観ていた記憶しかない。だからこそ、森達也のオウム真理教関係者を扱ったこのドキュメンタリーは新鮮だった。メディアがある組織を叩く。人々は、メディアによって作られた「形」を受け入れて、一緒になって叩く。しかし、内部の人間は社会という大きな闇によって虐められているということに観る者はギョッとするだろう。個人レベルか組織レベルかで観客の感情がいかに脆く動いてしまうものかがよく分かる作品だ。

そして、本作は意外なことに、『最後のジェダイ

』に通じるものがあった。それはカリスマなき世界で、平凡な人間がいかに巨大になりすぎた組織をコントロールするかを葛藤する物語だという点だ。

麻原彰晃なき世界で、思想のコントロールができず、どんどん組織が大破していくところはどこか切ないところがありました。

8.溺れるナイフ(2016)

鑑賞環境:Netflix
監督:山戸結希

本作の音楽と絶景の使い方に圧倒された私は座って本作を観ることができなかった。まさに青春というキラキラ輝かしい中に狂気が見え隠れする様子を、青い海と深淵の中の炎のコントラストで表現し切って見せた。個人的に小松菜奈が一番可愛く映せている作品である。

さて、中上健次作品の様なコントロールできない野生的な男達の日常から放たれる、某ネタ曲に注目して欲しい。通常、バラエティ番組でネタにされ、ギャグとしてお茶の間を沸かせるあの名曲を、あそこまで切なく、熱く、泣かせる表現として活用した山戸結希はとんでもないバケモノだ。今後の作品に期待。

7.平成ジレンマ(2010)

鑑賞環境:日本映画専門チャンネル
監督:齋藤潤一

暴力的な体罰教育で有名な戸塚ヨットスクールの今を撮ったドキュメンタリー。この作品こそ、教職課程の授業で観せた方が良い。教職課程の授業で「体罰」について議論になった時に、9割の生徒は「体罰はダメだ」という。確かに、体罰教育はイジメを容認する。生徒の心にトラウマを生む。暴力的な大人を作ってしまう。などとあまり良いことはない。

しかし、面白いことに戸塚ヨットスクールの暴力的なドン程「暴力的な教育」とは何なのかをといった哲学を持っている。体罰はいけないと考えている人よりも、暴力と向き合っている。そして政府以上に、学校社会に適応できない者を救おうとしている。学校社会に溶け込めない、凄惨な家庭環境で育った者に将来の明るい道を作ってあげるには、荒療法が必要な時もある。

観る者の倫理観を揺さぶる傑作と言えよう。

6.鬼婆(1964)

鑑賞環境:DVD
監督:新藤兼人

あのウィリアム・フリードキンが震え上がったジャパニーズ・ホラーの隠れた名作。あの巨匠・新藤兼人が奥さんこと乙羽信子に鬼婆役をやらす鬼畜っぷり全開。稲穂に覆われた謎の空間で繰り広げられる、親離れできないババアの執着、そして文字通り鬼婆になっていく姿に背筋が凍った。シンプルで低予算な作品なのに、魅せ方次第でここまで怖く、そしてめちゃくちゃカッコイイ画が撮れることを証明して魅せた傑作だ。個人的にはグザヴィエ・ドランは『トム・アット・ザ・ファーム』を撮る際に絶対本作を真似ているだろうと感じた。

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