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【ネタバレなし】『ビジランテ』入江悠が描く地方都市のギリシャ悲劇

【ネタバレなし】『ビジランテ』入江悠が描く地方都市のギリシャ悲劇

ビジランテ(2017)


監督:入江悠
出演:大森南朋、鈴木浩介、
桐谷健太、篠田麻里子etc

評価:75点

『SRサイタマノラッパー』シリーズで一躍有名になり『ジョーカー・ゲーム』や『22年目の告白』といったビッグバジェット作品を手がけるようになった入江悠監督。そんな監督が再びインディーズ映画に戻ってきた!地方都市を舞台に巻き起こる暴力的な映画で元AKB48の篠田麻里子も出演していることくらいしか頭に入れず、TOHOシネマズららぽーと横浜で観てきました。レイトショーにも関わらず6割近く埋まっていましたよ。

ちなみにこの作品は怪獣映画ではありません。『ビオランテ』の親戚でもなんでもないのであしからず。

『ビジランテ』あらすじ

暴力的な父親がなくなった。市議会議員の二郎はショッピングモール建設予定地に位置する親父の土地を相続して建設を円滑に進めようとしていた。デリヘルの店長をしている三郎とも話が付き、いざ土地を相続して売却しようとした矢先、失踪した一郎が帰ってきた。一郎には昔のような優しさは亡くなっており、寧ろ父親ソックリ暴力的な男となっていた。そんな一郎が公的書類でもって、土地の相続を主張してきたことから血みどろな闘いが始まる…

ギリシャ神話in埼玉県深谷

入江悠監督は、韓国暴力映画に近いものを日本で撮れる数少ない監督になったようだ。本作を予告編も観ずに鑑賞した私は、えぐい描写の連続に阿鼻叫喚した。まず、冒頭3人の少年が暴力的な父親から逃げるために川を渡るシーンから始まる。このシーンだけで、これはタダの日本映画じゃないぞ!この質感、韓国映画になっとるやないか!と思わせられる。そして、父親による暴行シーンがこれまた痛々しい。棒で子供たちを叩くシーンの音こそ、作り物感はあるのだが、役者の痛そうな表情、特殊メイクの血糊具合の生々しさがえげつないのでリカバリーできていると言えよう。

強烈なアヴァンタイトルから始まり、そこから展開される物語はまるでギリシャ神話やシェイクスピアの『リア王』を思わせるシンプルで重厚なものとなっている。

議員として社会的に見たら成功している二郎、闇稼業でくすぶった人生を送っている三郎。二人の均衡が取れている世界に、悪魔のような破壊者・一郎がやってくる。一郎は三郎のデリヘル嬢を片っ端からレイプする。議員の二郎に土地を渡さないが為に、二郎は周りの強面議員からハブられていく。そんな破壊者一郎VS二郎・三郎の血みどろ水面下な闘いの裏で、本作のタイトルにもなっている「ビジランテ=自警団」の活動が展開される。ショッピングモール建設の為に韓国人のボロ屋集落を壊滅させようと、二郎は自警団を差し向ける。正直、自警団パートと三兄弟パートの繋がりが弱い気もするが、徹底的に光を廃し、どこまでも闇が追ってくる作品としてこの自警団パートの容赦なさは効果的であった。

そして、なんと言っても入江悠監督はこの手の神話的映画の中で必要なエッセンスである、「長い時間」をしっかり演出しているところが評価に値します。冒頭で、優しき一郎を映すことで、「血に抗うことができなかった者」「空白の数十年」の重みが十分観客に伝わってくる。そして、劇中一郎の過去をなかなか明かそうとしない手法も一郎を「悪魔」として描ききるのに貢献している。それにより、本作を観終えた際の満足度は高いものとなった。

篠田麻里子の演技は上手い

本作には先述のように元AKB48の篠田麻里子が出演しているが、これがなかなか上手かった。二郎の妻役を演じているのだが、二郎が必死にダークサイドに墜ちないようにしている「闇の中の光」を演じているのに対し、彼女は完全に「闇に墜ちている」様子をオーラで表現している。台詞こそそこまで多くないが、立ち姿だけで悲壮感を伝えるその演技は、正直同じAKB出身の前田敦子より上手いと思いました。

最後に…

入江悠は映画ファンの中では、『SRサイタマノラッパー』以降大衆映画のダークサイドに墜ちたと囁かれているが、実はまだまだインディーズ映画監督としての野心。映画製作における妥協なき探究心を失っていないことがこの『ビジランテ』から分かります。なので、今年の追い込みに是非劇場でウォッチしてみて下さい。

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