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【ネタバレ酷評】『鋼の錬金術師』から考えるクソ映画の哲学

【ネタバレ酷評】『鋼の錬金術師』から考えるクソ映画の哲学

鋼の錬金術師(2017)
FULLMETAL ALCHEMIST(2017)


監督:曽利文彦
出演:山田涼介、本田翼、
ディーン・フジオカ、國村隼、
大泉洋、水石亜飛夢、小日向文世etc

評価:55点

12月。毎年ブンブンはTOHOのフリーパスを発動し映画を観まくるシーズンなのですが、今年は頭を抱えた。ただでさえ今年はワーストレベルのクソ映画が多かったのに、ここに来て『鋼の錬金術師』『DESTINY 鎌倉ものがたり』『未成年だけどコドモじゃない』『8年越しの花嫁 奇跡の実話』というモンスターがブンブンに襲いかかってきたのだ。あまりのボスラッシュぶりに頭痛が痛いとボキャブラリーに異常をきたしてきました。

さて、今回じっくり語る第一のボス『鋼の錬金術師』。先週金曜日、重い腰を上げ会社帰りに観ようとしたら(映画の日だしね)、何名かのフォロワーさんから止められました。ドンだけ酷いんだと頭を抱えました。ただ、観ず嫌いはシネフィル失格だ。観ずして『鋼の錬金術師』を語れんと思い始め、昨日TOHOシネマズ海老名で観てきました。

ってことで、早速感想を語っていきます。なお、ネタバレ記事なので、これから観ようと思っている猛者は本ページを閉じて映画館へ行って下さい。ただ、本記事を読んだところで面白さ半減するという映画でもないので、別に読んでから観ても問題ないと思います。

『鋼の錬金術師』あらすじ

荒川弘の同名人気漫画を実写化!!
幼き兄弟エドワードとアルフォンスは亡き母を復活させようと禁断の錬金術「人体錬成」を施すが失敗。母親は無残な姿になり、アルフォンスは身体を失い、エドワードは左足を失う。エドワードは右手を引き替えに、アルフォンスの魂を鎧に封じ込めた。それから月日は経ち、国家錬金術師になったエドワード。彼には野望があった。それは賢者の石を手にし、アルフォンスの身体を取り戻すことだった…

ワーナー錬金失敗!


本作は公開前から大炎上していた。というのも、公開前にも関わらず大量のレビューが、それも絶賛のレビューがヤフー映画に投稿されていたのだ。あまりの露骨さにTwitterでは炎上していました。

ただ、実は本作の製作を行っているワーナーは以前からこの手のことを頻繁に行っており、昨年の『テラフォーマーズ』や『ミュージアム』の際にも公開前なのに好評価なレビューが多く、平均点も高かった。前者に関しては、公開1ヶ月において酷評記事が全くGoogleの検索上位に出てこない。それこそ人気映画ライターであるヒナタカさんの記事
ですら出てこなかった。

決定的な証拠がないので断言はしませんが、ワーナーはサクラでもって評価を錬金しているのではという疑惑があります。ただ、今回は『テラフォーマーズ』や『ミュージアム』と比べあまりに露骨だったため、酷評を食い止めることが出来ず錬金失敗していました。

意外と面白い?

さて、いよいよ本題に入ります。今回の『鋼の錬金術師』は周囲の映画ファンが相次いで「酷かった~」と悲鳴を上げていましたが、蓋を開けてみれば意外と面白かったです。もう一度言います。

意外と…面白かった

ブンブン、実は本作の監督である曽利文彦には淡い期待を抱いていました。というのもあの大傑作実写映画『ピンポン』の監督だからだ。『ピンポン』は漫画原作以前に卓球をテーマにしたスポ根ものだ。にも関わらずこの実写版における試合シーンの大半はVFXが使用されています。徹底的にピンポン猛特訓したガッキーはなんだったんだと思うほど、気にならない。VFXだと分かっていてもピンポン超人たちのバトルに、体育会系部活嫌いなブンブンの心を鷲掴みにしました。

曽利文彦監督作品は『ピンポン』しか観たことがなかっただけに、不可能を可能にする監督と信じて『鋼の錬金術師』に挑んだわけです。そして、案の定曽利文彦監督は相当頑張っていた。それは2つのポイントにおいて特にそう感じた。

ポイント1:海外ロケが活かされている



大作邦画において海外ロケを行うと駄作になるというジンクスがある。『映画 ホタルノヒカリ』『アマルフィ 女神の報酬』etc…これらの最大の原因が、海外が記号的にしか使われていないのだ。折角の海外なのに、風景に重みもそこでロケを行う意味も感じられない。それならセットでいいじゃんと思ってしまうわけです。(その歪な邦画海外ロケ問題を逆手にとったのが三池崇史監督の『ジョジョの奇妙な冒険』である。)

それを考えて『鋼の錬金術師』を観ると、確かに街中の人々は日本人なので多少の違和感こそあるが、最大限ロケ地であるイタリア(ヴォルテッラ)の良さを伝えようとしている。オレンジレンガ調の建物や、自然から漂う空気感。これぞイタリアだと思ってしまう訳ですよ。もちろん、日本でセットを組み、撮影された場面もあるが、どこまでがイタリアでどこまでが日本で撮影したのか分からないほど(良い意味で)繋ぎ目が見えないところも高評価のポイントだ。

ロケ地イタリア トスカーナ州ヴォルテッラの情報は「トスカーナ自由自在」に詳しく書かれています。

ポイント2:意外と良い脚本

ブンブンは然程『鋼の錬金術師』に詳しくない。それこそ原作漫画を中学生時代に数巻読んだ程度だ。なので、Twitterで多くの人が叩いている原作からの改編やキャラ崩壊っぷりについては語れません。あくまで一本の映画として観たわけだ。なので本作を観ると、2時間20分に壮大な物語をよくぞまとめきったなーと関心した。日本映画にありがちなどうでも良いシーンを長々と映したり、竜頭蛇尾になったり、クライマックスを終えた後長々と後日譚を描くこともなくテンポ良く話が進みます。よく言われる、原作を知らないと理解不能な場面が多いという意見も、個人的にはそこまで難解ではないなーと思いました。

そして、何よりもエドワードとアルフォンスの友情描写は途中うるっと来る場所もありました。下手な恋愛やらギャグを挟まず、終始焦点を兄弟の友情に特化しているところが非常にシャープだなと感じた。

致命的な2つのポイント

ただ、本作はやはり致命的なポイントが2つあります。それにより、多少は面白いがやっぱり酷いところは酷いという中途半端な結果となり、今年のワーストテンにすら入れない結果となっていました。

致命的なポイント1:衣裳やヘアスタイルがダサい

まずなんといっても、衣裳やヘアスタイルがダサいのだ。金をかけた学芸会かと思うほどコスプレ感しかないキャラクター造形。それが、主人公エドワードに始まり、ハクロ将軍(もはや交番にいる人だ)、ウィンリィ(本田翼は可愛いが、イタリアにいる人とは思えないってかJKだよね)と出てくる人がみんな違和感しかありません。ただ、流石にVFXで演出されているアルフォンスやボスキャラ・ラストの造型は良かったです。

いい加減日本政府も映画に助成金を出すなら、衣裳デザイナーやヘアスタイリストを海外留学させ、育成した方が良い。

アメコミ映画は街中で歩いていたら、嘲笑わる程滑稽な格好しているヒーローが沢山登場するが、どれもカッコイイ!と思ってしまうし、自然と違和感がなくなってくる。これはやはり衣裳デザイナーやヘアスタイリストの手腕によるところが大きいと言える。だから、「どうせ漫画のキャラなんだから実写化は妥協が必要」っていう言い訳は通用しないのだ。

『鋼の錬金術師』は『銀魂』みたいにそれ自体をネタにするタイプの作品ではない以上、絶対にコスプレ感は出してはいけないのだ。特に主人公であるエドワードの造型はゼッタイに誰しもが惹かれてしまうようでなければダメなのだ。

致命的なポイント2:名優が世界観を大破させる

二つ目に、本作では大御所と呼ばれる名優達ががことごとく世界観を破壊します。謎の研究者タッカーを演じる大泉洋は大泉洋を、賢者の石のヒミツを知る男マルコを演じる國村隼は國村隼を、ハクロ将軍を演じる小日向文世は小日向文世を演じてしまっている。

特に國村隼に関しては大泉洋以上に致命的で、1ミリも「マルコ」という名前と顔が紐付きません。シンプルに覚醒していない『哭声 コクソン』のおっちゃんにしか見えません。

当然演技自体は上手い、死にそうになる際の喘ぎ声は素晴らしいと思う。でも、、、彼らがが演じているのは『鋼の錬金術師』の世界にはいない人物なのだ。もしかすると、脇役を二流や素人役者にやらせた方が評価が上がったかもしれない。珍しく、演技が上手すぎるが故に世界観を邪魔してしまう現象が観られました。

→NEXT:クソ映画の哲学

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