【TIFF2017】『マリリンヌ』A・デルミー女優賞受賞も納得のトラウマ人生劇

マリリンヌ(2017)
Maryline(2017)

監督:ギヨーム・ガリエンヌ
出演:アデリーヌ・デルミー、グザヴィエ・ボーヴォワ、
ヴァネッサ・パラディetc

評価:65点

東京国際映画祭でギヨーム・ガリエンヌ監督の『マリリンヌ』を観てきました。ギヨーム・ガリエンヌとは今Netflixでアップされている『不機嫌なママにメルシィ!』を撮った監督。映画祭に出されるようなアート系フランス映画というよりも、大衆映画路線なので、かなりクセが強く、ブンブンはちょっと苦手な監督。とはいっても、一本しか観ていないのでなんとも言えないが、果たして本作はいかがなものだろうか?

『マリリンヌ』あらすじ

父を失い哀しみに暮れるマリリンヌは、親元を離れて女優を目指す。しかしながら最初の撮影所で過酷すぎる現場を経験した彼女は心が壊れてしまい、酒に溺れていく…

A・デルミーが最優秀女優賞も納得!

正直、個人的にはハマらなかった。予習に観たギョーム・ガリエンヌの『不機嫌なママにメルシィ!』が合わなかったので期待はしていなかった。無論、本作は『不機嫌なママにメルシィ!』よりかは断然面白い。だが、ダメだった。

駄菓子菓子、この映画は日本公開して欲しい、この映画に救われる人がいるはず、なんならもし私が絶望の淵に立たされている時に本作を観たら元気になるだろう。そんな処方箋のような映画だった。

父を失い、葬式に出た後、女優を夢見て映画の撮影現場に行った少女。しかし、現実は厳しく、いきなり娼婦役をやらされ、監督に罵声を浴びせられ、周りのスタッフ役者に虐められる。心が真っ二つに折れた彼女は、女優を諦め仕分けの仕事に就くが、酒に溺れ、周りとのコミュニケーションの仕方も忘れ、心身ともにボロボロになっていく。

そんな悲劇のヒロイン・マリリンヌの地を這いつくばる様子に胸が苦しくなる。誰しもが人生の壁にぶつかる。その壁が人間関係に起因すると厄介。承認欲求は満たされず、政治的に疎外されていく。

そんな地獄絵図から微かな希望の光によって脱出していくマリリンヌのカタルシスに、心病んでいる方は癒されるだろう。

そんなマリリンヌを演じたA・デルミーは本祭で最優秀女優賞を受賞したがそれも納得だ。全編通じて漂うメンヘラ臭、負のオーラがえげつない。そして、1mm毎に前へ前へと成長していき、最後には観客が驚くような演技を魅せてくれる。映画自体は合わなかったものの、A・デルミーの演技は、正直『スヴェタ』のラウラ・コロリョヴァより上手だと感じた。これぞ演技魂と言える作品だ。

本作は「マンチェスター・バイ・ザ・シー

」のような処方箋映画。A・デルミーの迫真の演技で心洗われる映画ファンは沢山いるだろうからこそ、日本公開を私は希望する。

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