【TIFF2017】「花筐」は大林宣彦渾身のギャルゲー映画だった件!注目ヒロインは山崎紘菜!

花筐 HANAGATAMI(2017)

監督:大林宣彦
出演:窪塚俊介、満島真之介、
長塚圭史、柄本時生、矢作穂香(未来穂香)、
山崎紘菜、門脇麦、常盤貴子、村田雄浩、
武田鉄矢etc

評価:5億点

↑大林宣彦監督、この前テレビでやっていたドキュメンタリーや「亜人」に映っていた頃とはもう180度違う。あまりの老いてしまった姿に哀しくなった。そしてあまりのダンディさに痺れた。

チャールズ・ブロンソン、カトリーヌ・ドヌーヴ、世界のスターを撮りまくった凄腕CMディレクターにして、「HOUSE」、「異人たちの夏」と撮る作品総てカルト映画な鬼才、いや彼へのリスペクトをこう呼んだ方が良い。「映像作家」大林宣彦。そんな彼ももう79歳。なんと癌を患っており、余命3ヶ月を宣告。そんな彼が、実は監督デビュー作になるはずだった幻の映画「花筐 HANAGATAMI」を映画化した。そんな渾身の作品を東京国際映画祭で観てきましたよ!

「花筐 HANAGATAMI」あらすじ

火宅の人

」等で有名な文豪・檀一雄の同名小説の映画化。1941年唐津を舞台に、17歳の俊彦はキザな男、結核の少女などと仲を深めていく。しかし、戦争が、戦争が彼らの心を揺さぶっていく…

大林宣彦渾身のギャルゲーだw

上でも少し触れたが、実はこの「花筐」は大林宣彦デビュー作になる予定だった作品。檀一雄の戦時中の思い出を綴った小説を、当時CM屋として大活躍していた大林宣彦が映画化しようとしたのだが、時は高度経済成長期。皆が戦時中の記憶を忘れたがっていたので実現できず、代わりに「HOUSE」が爆誕した。

そんなお蔵入り企画を、死期が迫る中大林宣彦は撮りあげた。「これを撮らねば、死ねぬ」という想いで撮った結果、余命3ヶ月のフラグもへし折る、ひょっとして大林宣彦、亜人なのでは疑惑も出てくる奇跡が起きた。

閑話休題、正直前半30分は不安だった。ブンブンのオールタイムベストでもある「この空の花 長岡花火物語」のようなキレはないからだ。成熟してしまい、大人しくなった感じがしたからだ。

駄菓子菓子、大林宣彦映画が駄作なワケがなかった。段々と狂気のベールが顕になる。

本作は檀一雄という文豪の名を借りたギャルゲーだ。草彅剛級の狂気と天然さを兼ね持つ檀一雄を演じる窪塚俊介が、病弱な女、メンヘラ、イケイケ女子、更には半裸ムキムキマッチョに、島田雅彦クリソツな魔性の男からラブゲージを集めていく、フラグを立てまくる映画なのだ。そう、、、Kanonと大差ないギャルゲー感が凄まじい。そして、そんな世界の主人公を演じた窪塚俊介の演技が道化している。さらに、本作の登場人物の設定は皆10代なのに、窪塚俊介を始め30代以上の役者が演じる狂いよう。(それに対し大林宣彦は「ハリウッドでは役者が年齢を聞かれたときに、私は20歳~80歳ですと答える。これはその役者が演じられる年齢層だ。何故日本では年齢を訊くのがタブーなのか?別に30代が10代を演じてもよかろう。」と嬉々として語っていました。)

眼光をかっぴらき、けものフレンズもびっくりポジティブ猪突猛進っぷりに笑いを堪えることができません。

そして、ギャルゲーの世界観を唐津おくんちの鼓動、ビートが観客の中に木霊し、エンディングにいくに従い、ブンブンのスカウターはぶっ壊れてしまいました。

無論、映画作家大林宣彦は大まじめに作っている。戦時中にいた人を映し出す。戦後と戦時中の狭間にある矛盾に対し怒りを込めている。だが、あまりにポップ過ぎて涙が出る程爆笑したし、心を動かされた。

TOHOの看板娘・山崎紘菜が可愛い!

ところで、本作は前作「野のなななのか」に引き続き山崎紘菜が出演している。山崎紘菜といえば、TOHOシネマズの看板娘だ。だが、どうも映画運はすこぶる悪いようで、シネフィルですら「山崎紘菜が出演している映画教えて!」と訊かれたら戸惑ってしまうだろう。何故か映画監督は山崎紘菜の魅力を長年引き出せずにいたが、鬼才・大林宣彦の手にかかったらとんでもなく美人、それこそガッキー級に観る者を卒倒させるレベルにまで昇華させることに成功した。

背が高く、笑顔が美しく、檀一雄に想いを寄せるが、恋に気づいてもらえず時折翳りを魅せる姿にブンブンのココロはズキューーーーーンとぶち抜かれました。

大林宣彦のトークショーはクレイジーだ!

日本公開は有楽町スバル座レベルにもかかわらず、監督及び出演陣によるトークショーはマスコミが50人以上押し寄せるカオスな事態となっていました(東京国際映画祭はお客ファーストではなく、マスコミファーストなんだなと失望しました)。映画スタッフと観客との距離が近いと言われる東京国際映画祭、しかし日本映画の上映に関しては写真撮影を禁じているところが多い。本作のトークショーも写真撮影禁止だったのだが、流石は反骨精神の塊・大林宣彦。「どうぞ写真を撮って下さい」と言い放った。さらには、マスコミが撮影の準備を始める前に制作秘話を語り始めた。そう、大林宣彦にとってマスコミはどうでも良い。映画を観に来てくれた観客、それも若い観客に「忘れ去られつつある戦争」を命をかけて伝えようとしていたのだ!

大林宣彦は、戦争を体験した。戦時中、遊びですら制約があり、学校も暴力で支配されていた。それが戦後、ころっと大人達は「平和」を語り始めた。大人を信用できなくなった。だからこそ彼はカメラというおもちゃで自由を求めた。映画会社に縛られず、ぶれずに取り続けた。恐らく、本作で大林宣彦は総てを出し切ったであろう。「HOUSE」で始まり「花筐」で終わる。総てが一つに繋がった。

ブンブンのココロヲ動かしまくった大林宣彦に、感謝で一杯になりました。

テレビでやっていたドキュメンタリーによると、本作は脚本を読んだスタッフや長年連れ添った妻ですら、完成像が想像できなかったとのこと。大林宣彦が亡くなっていたら、誰にも完成させることができなかった作品。それだけに本作を創り上げてくれてありがとう!大林宣彦!

最後に…

本作は、撮影から編集まで行った大林宣彦ですら、「んっこんなシーン撮ったっけ?」と思うようなカオスな作品。それ故に、大林宣彦映画ファンの間でも賛否は分かれる。それこそ0点か5億点かの作品だ。しかしながら、確実に言えることは、「観て損する映画」ではないこと。

第30回東京国際映画祭レビュー

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12/16有楽町スバル座で公開されるので是非劇場でウォッチしてみてください。

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