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【解説】「オン・ザ・ミルキー・ロード」はクストリッツァ版「この世界の片隅に」であり「ダンケルク」だ!

【解説】「オン・ザ・ミルキー・ロード」はクストリッツァ版「この世界の片隅に」であり「ダンケルク」だ!

オン・ザ・ミルキー・ロード(2016)
ON THE MILKY ROAD(2016)


監督:エミール・クストリッツァ
出演:エミール・クストリッツァ、
モニカ・ベルッチ、
プレグラグ・ミキ・マノジョロビッチetc

評価:75点

エミール・クストリッツァ…「黒猫・白猫」「アンダーグラウンド」で欧米だけでなく日本人もロマのUNZA♪UNZA♪ミュージックに熱狂させたことで有名なユーゴスラビア出身の監督だ。そんなエミール・クストリッツァ監督が、サッカー選手ドキュメンタリー「マラドーナ」以来9年ぶりに新作を日本に放った。その名も「オン・ザ・ミルキー・ロード」。日本でもクストリッツァ人気は高く、毎年のようにクストリッツァの特集上映が開催され、今年も「アンダーグラウンド」の5時間テレビ版を上映したというのに、東京都内ではTOHOシネマズシャンテのみ(YEBISU GARDEN CINEMAでも上映しないらしい)の上映という哀しい状況だが、ブンブン有給取って観てきました。果たして…

「オン・ザ・ミルキー・ロード」あらすじ

戦時中のとある村。ミルク配達員の男コスタは、謎の美少女に惹かれる。そして、逃避行が幕を開けるのであった…

クストリッツァ版「この世界の片隅に」

これはクストリッツァ版「この世界の片隅に」であり「ダンケルク」であった。

まず、本作を語る前にクストリッツァ監督の出身国であるユーゴスラビアについて知る必要がある。ユーゴスラビアと言えば、7つの国境、6つの共和国、5つの言語に3つの宗教、2つの文字と複雑な背景を持っていた今は亡き国で、常に激しい紛争で荒れていたことで有名だ。

クストリッツァ監督は伝家の宝刀UNZA♪ミュージックとシュルレアリスムを使い、自身を主演に怒りをぶつけた。

冒頭、アヒル軍団がブタの鮮血に飛び込むシーンから、「一見統率取れている純白なユーゴスラビアは血で血を洗うカオスなヤバイ国だったんだぜ!」というメッセージが聞こえてくる。

本作は牛乳配達員(エミール・クストリッツァ)がモニカ・ベルッチ扮する無軌道な謎の美女と逃避行するという内容だが、人間よりも動物にフォーカスが当たっている。

ハクソー・リッジ」や「ダンケルク」さながらの爆撃の中(今年屈指の爆破描写)を、羊やロバ、蝶などが健気に生きる様子を徹底的に見せる。まさに「この世界の片隅に」で表現されていた、「地獄の人間界と紙一重で存在する自然界の天国」が効果的に演出されていた。しかし「この世界の片隅に」とは違い、この映画の天国は激しく粉砕されていく為、ヒリヒリする程痛い。「この世界の片隅に」以上に、動物の「生と死」が強調されている。

蛇が牛乳配達員がこぼした牛乳をすする。鳥は人間どもが引き起こした戦火を気にせず自由に大空を羽ばたく。この健気さを観ると、永遠と戦争しては休戦しを繰り返す人間どもの活動がバカらしく思えてくる。そして動物たちの「自由」まで浸食する人間どもが哀れに思えてくる。CGや特撮でホンモノの動物に残虐行為はしていないものの、強烈で凄惨な人間・動物殺戮描写を演出することで、観客に「痛み」を与えるのだ。

今まで、クストリッツァ監督はにユーゴスラビアの愚かないがみ合いや戦い、移民の辛さをロマの音楽に合わせて描いてきた。今回、クストリッツァ監督自身が主演し、今までにない容赦しない演出に監督の「怒り」を感じ取った。人種のいがみ合いで国すら亡くなってしまった哀しみ。陽気なサウンドの裏側に、強烈な哀しみが込められていたのだ。

まあ「アンダーグラウンド」が凄すぎた為、それを超えるには至らない作品ですが、一見の価値ある作品と言えよう。是非、TOHOシネマズシャンテへ行ってみてください!

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