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【ネタバレ】「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」子どもにも魅せたいマクドナルドビジネス映画

【ネタバレ】「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」子どもにも魅せたいマクドナルドビジネス映画

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ(2016)
The Founder(2016)


監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:マイケル・キートン、
ニック・オファーマンetc

評価:85点

時は夏休み、シネフィルにとってはある種シーズンオフの時期です。シネコンでは、ロボットががっしゃんがっしゃん七変化する映画や、漫画原作ものがスクリーンに立ち並び、シネフィル好みの作品がなかったりします。しかし、先日なんとなく角川シネマ新宿で観た「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」がホームラン級に面白かった。もしブンブンに子どもがいるのなら、「メアリと魔女の花」や「カーズ クロスロード」よりもこちらを魅せたい。ということで、今日はじっくりと「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」について解説&考察していきます。

別にネタバレ云々な映画ではないのですが、ラストについても触れているので、ネタバレされたくない方はこのページを閉じて映画館へ行ってください。尚、劇場かなり込んでいますので、事前予約することを強くオススメします。

また、マクドナルドで食事をしてから観るとなかなか面白いですよ~

「ファウンダー」あらすじ

シェイクミキサーのセールスマンをしているレイ・クロックは、アメリカ中を飛び回るがなかなか受注に繋がらず苦戦していた。そんなある日、彼の事務所に1件で8台もの受注依頼が来ていた。不審に思い、実際に受注先へ向かうと、そこにはマクドナルドというハンバーガ屋があった。メニューは最小限、皿もフォークもなければ、ウエイトレスもいない、しかも注文してから提供まで僅か30秒という斬新な店であった。そのシステムに感銘を受けたレイ・クロックは、創設者のマクドナルド兄弟を説得しフランチャイズ化する権利を得るが…

感想:ビジネス書並み!目から鱗の経営学

「ウォルト・ディズニーの約束」のジョン・リー・ハンコックが撮った、このマクドナルド創世記は、経営や経済の勉強をしてこなかったブンブンにとって強烈な作品でした。まるでマーティン・スコセッシの「カジノ」や「ウルフ・オブ・ウォールストリート」のように、テンポ良くゲスな男が頂点に上り詰める様子を描きながらも、緻密に緻密を重ねた調査で、アメリカ全体を取り巻くあるビジネス像が見えてきます。

映画業界で夢を追い働くものの、世界恐慌絵業界を追い出されたマクドナルド兄弟は1940年5月15日にBBQレストランを始める。

この時代、フォード社が車の大量生産技術を確立し、若者も車を持てるようになった時代。若者はレストランへ行き、車から注文。ローラースケートに乗ったウエイトレスが料理を運んでくるスタイルが主流だった。まさに「アメリカン・グラフィティ」の世界観です。

しかし、このレストランシステムだと、料理を間違えたり、レストランの駐車場でたむろしている不良による治安の乱れといった問題があります。そこでマクドナルド兄弟は、画期的なシステムを考える。それは、徹底的に無駄を削るということです。メニューは最小限のハンバーガー、ポテトフライに飲み物に留める。ウエイトレスも減らす。皿やフォークを廃止し、片手で食べられるようにする。そして、注文から食事の提供までを30秒にする為、工場のベルトコンベア方式を採用して、どんな人でも最高クオリティのハンバーガーを作り出せる環境を作り出した。

てっきり、ブンブンはマクドナルドの誕生話は、システム開発の苦労譚だと思っていました。しかし、これが本当に恐ろしい話でした。なんと、マクドナルドは、レイ・クロックというチェコ系移民によって奪われた産物だったというのです。セールスマンのクロックが、マクドナルドのビジネスに感銘を受けて、強引にフランチャイズ化する権利をマクドナルド兄弟から得る。

マクドナルド兄弟も既にフランチャイズ化していたのだが、「質が落ちる」という理由で乗り気ではなかった。また、マクドナルド兄弟は映画業界での挫折を機に、禁欲的になっていたので店を増やすことに興味はなく、「契約書があるからいつでもクロック氏を追い出せる」とたかをくくっていました。

クロックは、最初は苦戦するものの、次々と店舗を増やしていく。そして欲に溺れていくのです。やがて、マクドナルド兄弟にいちいち許可を取らないと承認が降りないことに苛立ちを覚えて、マクドナルド兄弟から店を乗っ取ろうとする作戦に出る。

本作を観て誰しもが驚くことは、「契約書は破棄できる」ということだろう。アメリカは「ハクソー・リッジ」でも描かれている通り、契約書大国。契約書で守られているイメージがある。しかし、本作を観ると、適切なときに権利を行使しなければ契約書は紙くず同然になってしまうということがわかる。クロックは、まずマクドナルドの店舗数を増やす。彼は大変な境遇だが、やる気は人一倍あるヤツを店長に選んで採用する。そして、店舗を増やすことで、不動産業として機能させる。各店舗から場所代を徴収するのです。そして、莫大な富と莫大な店舗数でもって、本店であるマクドナルド兄弟の店を徹底的にマイノリティな存在へと追いやる。極めつけは、不動産業を行う名目で別会社(McDonald’s Systems Inc.)を立ち上げて、マクドナルドをその傘下に置く。こうすることで、マクドナルド兄弟が持つ契約書の価値を紙くず同然にするのです。

そして、最終的に「マクドナルド」と語らせる権利を兄弟から奪う。マクドナルド創設年も1940年から1954年へと書き換えてしまう。

今まで、フランチャイズってなんでポンポン簡単にできるんだろう?と思っていたのだが、ある種のカルト教団を作るように国内外へと波及していくんだとわかり目から鱗でした。

本作を観ると、
・契約書は万能ではない
・単価の低い商売は不動産業で稼いでいる
・どんなヤツでも根気と欲で怪物になれる

といったことが学べる凄い作品でした。

これは、学生時代に知りたかった話。夏休みの今だからこそ子どもたちと一緒に観たい作品でした。

考察1:第三の宗教

本作の面白いところは、マクドナルドを乗っ取る男クロック氏の映るシーンに十字架が頻繁に映るというところ。クロック氏はこう語る。「どの町にも、十字架と星条旗はある。そこに新しくアーチ(マクドナルド)を加えよう。」そう、クロックは第三の宗教を作ろうとしていたのです。物語が進む内に、クロックは教祖になっていき、人々を先導する様子を象徴している描写なのではと考えられます。

考察2:クロック氏が観ていた映画「波止場」について

クロック氏が映画館で「波止場」を興味深そうに観ています(実際に1954年7月28日に公開されています)。「波止場」は、八百長でボクサーを引退し日雇い労働者としてキツい生活を送っている男が、次第に、信念に基づき生きることに目覚めていく話。町山智浩曰く、「ロッキー」の元ネタになった作品とのこと。クロック氏は、セールスマンとして上手くいかず、妻との仲も倦怠期に陥っている。地に墜ちた状態から、信念を見つけ出し、イケイケドンドン前へ進もうとする。搾取される側にならないぞと躍起になるマーロン・ブランド扮する元ボクサーに感銘を受けたと言えよう。

こういうところまで細かく描いていくジョン・リー・ハンコックの手腕に興奮しました。

最後に…

本作は子どもにも魅せたい傑作ビジネス映画ではあるが、一方でもう一人魅せたい人がいます。それはココマルシアターの樋口義男支配人です。ココマルシアターとは、クラウドファンディングで吉祥寺に作られている映画館。しかし、見積もりが甘かったせいか、工事が難航し、本来のオープンから半年経とうとしている今でも完成できずにいる曰く付きの映画館です。

ココマルシアターの支配人が運営する株式会社デジタルワークスエンターテインメントを調べて観ると、非常にブラックな内情が見えてきます。そんな凄惨な状態とこのマクドナルドの惨劇が結構重なります。なので、是非とも樋口義男には本作を観て、頑張ってココマルシアターを完成させてほしいものです。

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