【試写会】「怪物はささやく」J.A.バヨナが送る心理学講座!

怪物はささやく(2016)
A Monster Calls(2016)

監督:J.A.バヨナ
出演:ルイス・マクドゥーガル、
フェリシティ・ジョーンズ、
シガニー・ウィーバー、
リーアム・ニーソンetc

評価:65点

第55回優秀外国語映画輸入配給賞の授賞式に行ってきました。今回は、「ルーム

」「帰ってきたヒトラー

」「ラ・ラ・ランド

」を配給したギャガ株式会社が受賞しました。ギャガ株式会社が受賞したとのことで、日本公開6/9(金)のダーク・ファンタジー「怪物はささやく」の試写も同時に行われたのだが果たして…

「怪物はささやく」あらすじ

12:07、少年の前に巨大な何某が家庭訪問を実施。難病を抱えた母を取り巻く壊れゆく家庭、学校のイジメに悩まされる少年に何某はこう語った。「おめぇさんに3つの小話をしてやろう。3つ目の話が終わったら、お前が4つ目の話を語るのじゃ。さもなければ、さもなければ…」。
少年は何某の悪夢、現実の問題2つの次元を行き来しながら大人に、大人になっていく…

フロイト先生登場!?真面目な心理学映画だった

本作は、「パンズ・ラビリンス」のスタッフが送るダークファンタジーと謳われている。「パンズ・ラビリンス」はスペイン内戦時代の、陰鬱とした世界を少女の空想の世界と融合させて描いた大傑作であった。本作も、所謂ティム・バートンのような表面上だけで完結するダーク・ファンタジーとは一線を画する作品であった。

最初に忠告しておくと、ティム・バートンのような軽いファンタジーだと思って観に行くのは非常に危険です。退屈する恐れが高く、またあまりの陰惨且つ難解なストーリーにノックアウトする可能性が高いからです。しかし、もし心理学、特にフロイトの夢判断に興味があるのであれば、本作は至高の体験をあなたに与えてくれるであろう。

本作を理解する上で重要なポイントは、13歳の少年が社会の不条理を乗り越えていく物語だということにあります。少年の家庭は最悪で、大好きな母親は難病に罹り、病院で闘病生活を送っている。父は母と離婚し、どっか遠くへ行ってしまい、馬の合わないおばあちゃんと暮らさないといけない。また、学校では苛められている。そんな彼は、12:07になると心の友だちである大きな何某と対話をする。社会はあまりに不条理。心に眠る破壊願望を空想の世界で現実逃避することによって晴らしている。そんな彼の心の中で、現実に適応しようとする動きと現実逃避し続けようとする心が対立する。夢の中で、自分が何を怖がっているのかを何某との対話で明らかにしていくことで少年は成長していくのです。

誰しもが抱く、トラウマ、特に思春期に抱く破壊願望を乗り越えていく過程が非常に緻密で面白かった。J.A.バヨナ監督は「インポッシブル」でも魅せているが、エモーショナルな演出が非常に上手い。そして、今回は黒沢清張りのホラー演出がこれまたシャープで良い。

確かに会場で寝ている人が多かったのも分かるくらい、物語的には鈍重な部分もあったがこれは侮れないダークファンタジーの一本と言えよう。

P.S.
少年は13歳という設定なのだが、授業内容が13歳とは思えないぐらい高度です。ネイピア数とか扱っているので、これから観る人は少年の授業風景もよく観察しておくと面白いですよ。

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