【ゼミレポート】「リザとキツネと恋する死者たち」変な日本文化の新しい映画文法

リザとキツネと恋する死者たち(2014)
Liza, a rokatunder(2014)

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監督:ウッイ・メーサー・ロシュ・カーロイ
出演:モーニカ・バルシャイ、
デヴィッド・サクライetc

評価:70点

大学の映画ゼミで観た作品。
ハンガリーの日本文化マニア
であるウッイ・メーサー・
ロシュ・カーロイが、
トニー谷という昭和スター
を面白い使い方で
調理したことで有名な
作品。

世界三大ファンタスティック
映画祭の2つポルトとブリュッセルを
制した
実力派でもある。

「リザとキツネと恋する死者たち」
あらすじ

日本大使夫人のもとで働くことと
なったリザ。
そんな彼女の前に
日本歌手トミー谷の
姿をした幽霊が現れる。
その幽霊が見え始めてから、
リザが出会った相手が
バタバタと亡くなり…

レポート転載:
間違った日本文化の
新しい用法

外国映画における日本描写は
非常にいびつである。
サムライ、スシ、ゲイシャのごとく
ステレオタイプの日本人像が劇中で描かれる。

一昔前の外国映画なら
「悪魔の毒々モンスター」、
「ワイルド・スピード×3 TOKYO DRIFT」、
「キル・ビル」のように外国人が日本へ行き、
カルチャーショックを受ける
タイプの作品が多かった。実際、
そのような作品に影響を受けた
井口昇監督は「片腕マシンガール」、
「ロボゲイシャ」
といった作品を製作した程だ。

さて2010年代、
そのようなステレオタイプ
日本描写を描く外国映画は
少なくなってきている。
そして、昭和歌謡曲を使用することで
日本を描く作品が増えてきている。

「嗤う分身」や「インヒアレント・ヴァイス」
では効果的に昭和歌謡曲が使われている。

閑話休題、今回鑑賞した
ハンガリー映画
「リザとキツネと恋する死者たち」は、
昭和歌謡曲を使った映画としては
非常にビザール且つ
昭和歌謡曲を使用する必要性を
持たせた画期的な作品だ。

この手の映画を日本人が
観ると感じる、「違和感」
イントネーションや仕草に違和が生じる
ハリボテの日本人像を「死神」や
「異世界」という、現実とは
別の次元にある存在を誇張する
為に使われているのだ。

時代遅れなミントグリーンに
身をまとった、トミー谷。
彼の歌う独特な歌謡曲、
それが物語終盤に死へ
誘う曲だと分かったとしても、
前半にしっかり違和感を
演出しているため、
驚かない作りとなっている。

また、主人公や日本人大使夫人が
日本語を使用する場面では、
決まってトミー谷が登場する。
また、主人公がハンバーガー
ショップでカニ肉バーガー
を注文する際の
ディスコミュニケーション
描写も描かれていることから、
日本文化=死神、死者の世界との
対話
という構成が成り立っている。
ハチャメチャでシュールな
世界観ながらも、
徹底的にルールを遵守した作品と言える。

何故トミー谷は女に変身したのか?

さて、本作を観た方なら
疑問に思うであろうトミー谷の描写。
実際、ディスカッションで、
「何故、宇宙飛行士を殺す際に、
トミー谷が女に変身したのか」という
疑問点があがった。これは、
殺される側の欲望を具現化した形だろう。

元々、トミー谷は、日本文化好きの
主人公を殺すために、
日本人歌手に扮していた。
主人公目線から本作は描かれるので、
物語の大半は歌手姿で登場する。
しかし、宇宙飛行士のシーンは彼目線な為、
宇宙飛行士の欲望である女を反映したと言える。
故に、この「リザとキツネと恋する死者たち」は、
最後の最後までトミー谷は主人公の周りを
彷徨い続けることとなる。
詰まるところ、主人公は本当の愛を知ることで、
死神をただの亡霊へと変えることに成功したのである。

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