【ネタバレ】「ハドソン川の奇跡」24分の事件をどうやってイーストウッドは映画化したのか?

ハドソン川の奇跡(2016)
SULLY(2016)

ハドソン川の奇跡

監督:クリント・イーストウッド
出演:トム・ハンクス、
アーロン・エッカートetc

評価:80点

俳優としてだけではなく、
映画監督としても匠な
技を魅せる外れなき
クリント・イーストウッド

彼の最新作は、
2009/1/15に起きた
USエアウェイズ1549便不時着水事故
だ。

NYラガーディア空港発
ダグラス国際空港経由シアトル・タコマ国際空港
行きの飛行機が離陸直後に、
鳥の群れと正面衝突。
両側エンジンがやられる大惨事の中、
一人の機長の決断で
ハドソン川に着陸し、
乗客155名全員を救った話だ。

しかし、この事件は、
発生から不時着、
救助まで24分しかかかって
いない。映画化するには
尺が短いのだ。

その尺問題を見事に解消
し傑作にしたのが
まさに「ハドソン川の奇跡」だ!

「ハドソン川の奇跡」あらすじ

2009年1月1日、
ラガーディア空港より飛び立った
USエアウェイズ1549は離陸直後に
鳥の群れと衝突し、両側エンジンが
故障する。

苦渋の選択の末、パイロット
チェズレイ”サリー”サレンバーガーは
ハドソン川の着水を敢行。
見事乗客155人を救う。

しかし、あまりに前例のない
事態だったため、
国家運輸安全委員会に
呼び出され、
その決断は正しかったのか
どうかを検証する羽目となる…

「奇跡」ではない「仕事」の映画

本作は、たった24分の出来事を、
事故、そしてそれを巡る
法廷劇の2つのパートで
描き、さらに互いの
ストーリーを交差させることで
非常に重厚なドラマを生み出している。

邦題は「ハドソン川の奇跡」と
なっているが、劇中で、何度も
トム・ハンクス扮するパイロットは
「あれは奇跡ではない。
仕事でやったまでだ。」と語っている。

実際のパイロット・サリーが
明言していることを
イーストウッドはきちんと
くみ取っており、極めて
論理的検証を行った
作品となっている。

なので、飛行機が離陸してから、
ハドソン川に墜落し、
救助されるまでの24分間を
音楽流すこと無く、
本物そっくりにシミュレーション
しているのである。
実際にイーストウッドは、
飛行機を川に浮かべ、
救助艇の配置も本物と
同じにしているぐらい
とことん突き詰めている。

また、その時の様子を
乗客パイロット目線だけで無く、
管制官や救助艇の職員、
パイロットの妻等様々な
視点を交えることで、
いかにサリーが
短時間で正しい決断を
したのかが分かる仕組みとなっている。

特にブンブンが面白かったのが、
管制官のシーン。

管制官は空港の滑走路に
パイロットを誘導するのだが、
パイロットが話を聞いてくれず、
ハドソン川の方向へとレーダー上の
飛行機が移動しているのを見て、
「これはアカン」と
席を立ってしまう。

レーダーと音声上だけの
やりとりによる緊迫感
以上に、この救えなかった
と管制官職員が思い込む
様子がこれまた切なくて
良い。パイロットだけが正しい
決断をしたのではなく、
管制官も正解へと導こうと
努力していた過程がしっかり
描けているのだ!

つまり、この手の実話ものが
奇跡の感動ドラマとして
描いてしまうものを、
プロジェクトXよろしく、
極めて「仕事の結果」
として
描いているところが凄いのだ。

まるで飛行機の機内映像!
大画面で観るべし!

皆さんは、飛行機に乗った際に
機内映像は観ますか?

大抵、避難方法について語られると
思うのですが、本作を
そのまま流しても良いぐらい
脱出の方法がリアル且つ
為になるのだ。

飛行機が墜落するときには、
前屈みになり、
川に着水した際には、
余計な荷物を持たず、
ラフトへ避難する。

下手に水に飛び込むと、
冷たくて凍え死にそうに
なる乗客描写もあり、
また足の不自由な人を
助け合う描写もある。

完璧な脱出マニュアル
となっているのだ。
なるほど、今回
この作品はIMAXで
撮られているのだが、
それも納得。
観客も1/15の
事故を追体験できる
作品となっていました。

まあ、とにかく次のアカデミー賞は
作品賞、監督賞、主演男優賞、
脚色賞、美術賞、特殊効果賞、
編集賞にはノミネート

するんじゃないかな~

参考資料

本作を観ると、
USエアウェイズ1549便不時着水事故
について知りたくなる。
Youtubeに貴重な資料が
ありましたので貼っておく。
復習にどうぞ。

↑実際に事故が起きてパイロットが
対処した際の音声(フル)

↑フライトシミュレーション

↑ナショナルジオグラフィックによる解説

ところで「フライト」って映画知ってる?

2012年にロバート・ゼメキス監督、
デンゼル・ワシントンで似たような
作品「フライト」
が作られてました。

こちらも、飛行機事故を救った男が、
裁判で訴えられる話なのだが、
コチラは非常にドラマチックに
描かれています。

なんたって、デンゼル・ワシントン
扮するパイロットがアル中
という設定で、
故障した飛行機の対処法で
背面飛行を選択するのだ。

飛行機好きのブンブンには
説得力に欠ける
作品だったのだが、
興味あれば是非観てみて
ください。

関連項目

「アメリカン・スナイパー」レビュー

「インビクタス」レビュー

ブロトピ:映画ブログ更新

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