“Ç”【ジャック・リヴェット追悼】幻の12時間40分「アウトワン」#1オイディプス王とバカ

アウトワン(1971)
OUT1(1971)

アウトワン

監督:ジャック・リヴェット
出演:ジャン=ピエール・レオー,
ジュリエット・ベルトetc

評価:?点(最後まで観たときに
点数をつけます)

今年の1/29にヌーヴェルヴァーグ
の重要人物ジャック・リヴェットが
亡くなった。

日本では「美しき諍い女

」という
4時間の超長い作品で有名だ。
カンバスに裸体の絵ができる
様子を、淡々と映し出し、
0から1になる様子を捉えた
凄い作品である。

そんなリヴェット監督が
12時間40分の作品を作っていたのを
ご存じだろうか?

1971年に作られた本作は、
ある演劇の即興性にフォーカスを
当てた作品。1968年の5月革命の
熱気をまとった、
まさに映画を超えた1本(アウトワン)
な作品だ。

ゴダールが、「気狂いピエロ」や
「はなればなれに」
等の作品で
常に映画の常識を破ることを
していたが、他のヌーヴェルヴァーグ族
もしきりに映画の壁を越えようとしていた。

日本では、未DVD化で極まれにしか観られない
幻の作品だが、今回フランスの知り合いから
DVDを入手したのでレポートします。

日本も今回の追悼に合わせて
DVD化していただきたいものです。

第1話DE LILI À THOMAS
(リリからトマまで)
第2話DE THOMAS À FRÉDÉRIQUE
(トマからフレデリックまで)

エキゾチックな音楽による舞いから
本作は幕をあける。

太鼓とグァ~ンという音楽の
熱い洗礼を受ける。
冒頭から、非常に挑発的だ!
5分以上に渡る長い演目が終わると、
今度はオイディプス王の劇が始まる。

どうやら、この劇団はギリシャ神話の
再構築に挑もうとしている。

声の抑揚に力を入れ、
自分という人格を
失い、完全に役に入り込む
(=トランス状態)になろうとする。

一方で、劇団の一人の
私生活が挿入される。
やはり貧しい劇団なのか、
金を稼がなくてはならない。

青年は、「耳が不自由で、
言葉も話せません。
1フランください」
という
青い紙をカフェで配り、
騒音同然のハーモニカ演奏で
カフェの人から金をふんだくる。

金をくれないと、執拗にハーモニカで
嫌がらせをする。

ラース・フォン・トリアーの
「イディオッツ」さながら、
「障がい者」になりきることで、
社会の悪を暴こうとしていて
悪趣味だな~と感じながら、
同時にこのシーンが「演技」なのか
「本物」なのかが分からなくなってくる。

カメラがあるはずなのに、
客は一切カメラを意識しない。
ともすれば、あの本物に近い
カフェの人々は「演技」を
しているのでは?

この映画は「演技」と「本物」の
境目をどんどん薄くしていく。
この時点ですげ~なと思う。

ソドムの市?

そして、1話と2話の終盤では、
役者たちが奇声を発しながら、
バカを演じきる大団円が
幕を開ける。

延々と各数十分に渡る、
奇声と、肉体と肉体に
よるぶつかりあい。
「ソドムの市」かな?
あれっ?ギリシャ神話の劇団だったよね?
と疑問を抱き始める。

あの衝撃作「ソドムの市」が1975年の
作品なので、この作品は
その先をいって狂気を見せつけている。

「ソドムの市」以上にデカダンスな光景に
唖然、唖然である。

何故、あの演技をしなければならないのか、
これは12時間後に分かるのだろうか?
次の話に興味を抱くブンブンでした。

P.S.「演劇1・2」で分かるかな?

想田和弘の観察映画「演劇1・2」
本作の「リアル」と「演劇」の関係を
捉えている模様。
これと比較して観てみたいな~

関連項目

「アウトワン」#1

「アウトワン」#2

「アウトワン」#3

「アウトワン」#4

「アウトワン」#最終章

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