*

“Ç”【カンヌ映画祭特集】「ワイルド・アット・ハート」赤の使い方について考察してみた

“Ç”【カンヌ映画祭特集】「ワイルド・アット・ハート」赤の使い方について考察してみた

ワイルド・アット・ハート(1990)
Wild at Heart(1990)

ワイルドアットハート
監督:デヴィッド・リンチ
出演:ローラ・ダーン、ニコラス・ケイジetc

評価:60点

学校の授業で観た。
久しぶりに観たのだが、
よくこんなゲテモノ作品が
カンヌ国際映画祭で
パルム・ドールを獲ったなと
思う。

確かに審査員長はベルトルッチ
だから分からなくもない。
当時のコンペ作は下記の
通りと、強豪は少なかったせいだとも
考えられる。
それにしても、「美」か
「社会派」に偏るパルムドール史
においてゲテモノ溢れる
こいつが獲ったのは意外だ。
(翌年の「バートン・フィンク」も
そうだが…)

1990年カンヌ国際映画祭
コンペティション一覧

・愛と哀しみの旅路
(アラン・パーカー)
・シラノ・ド・ベルジュラック
(ジャン=ポール・ラプノー)
・ダディ・ノスタルジー
(ベルトラン・タヴェルニエ)
・ブラック・アジェンダ/隠された真相
(ケン・ローチ)
・菊豆(チュイトウ)
(チャン・イーモウ)
・La Captive du désert
(レイモン・ドゥパルドン)
・仮面の愛/マスカレード
・La putain du roi
(アクセル・コルティ)
・Matj
(グレブ・パンフィーロフ)
・ヌーヴェルヴァーグ
(ジャン=リュック・ゴダール)
・尋問
(リシャルト・ブガイスキ)
・Rodrigo D: No futuro
(ヴィクトル・マヌエル・ガヴィリア)
死の棘
(小栗康平)
・みんな元気
(ジュゼッペ・トルナトーレ)
・タクシー・ブルース
(パーヴェル・ルンギン)
・掟
(イドリッサ・ウエドラオゴ)
・Ucho
(カレル・カヒーニャ)
・ホワイトハンター ブラックハート
(クリント・イーストウッド)
・ワイルド・アット・ハート
(デヴィッド・リンチ)

あらすじ

愛するルーラの母親に嫌われて、
刺客を送り込まれるものの
そいつを殺してしまった男セイラー。

ムショにぶち込まれるものの、
互いの愛は激アツ!
執行猶予による仮釈放を
利用し、二人は再会し
逃避行に出る。
当然ルーラの母親マリエッタ
の逆鱗に触れ…

ブンブンによる「赤」比較

本作は映画好きの間で主に「オズの魔法使い」翻訳
問題について考察される。しかしながら、
私は「赤」の使い方こそ強く言及することだろうと
考えこれから論を展開する。

まず、第一に多くの映画において
「赤」は「愛」や「情熱」を表すか「殺意」
「血」
を表すかの両極端になりがちである。

↑例:「サスペリア」

一方「青」は「悲しみ」「恐怖」「澄んだ心」
「晴れ」「未来」と多彩な表現が一つの
映画に挿入される傾向がある。

↑例:「秒速5センチメートル」

例えばタルコフスキーの「ローラーと
バイオリン
」では、
仲の断絶と明るい未来
という真逆のことを
水=青で表現していた。

 本作では、「追う者」であるマリエッタ
「追われる者」であるセイラー&ルーラ
シーンにおける「赤」の使い分けに明確な差が生じている。
マリエッタのシーンでは、口紅や真っ赤な
ハイヒール等が強調されている。
言わば単色の「赤」である。一方セイラー
&ルーラのシーンでは常に「炎」という、
揺れ動く「赤」を強調して描いている。
セックスシーンも揺れ動く赤をフィルター処理している。

 このことから、マリエッタの「赤」はセイラー
&ルーラに囚われた状態を象徴
しているといえる。
一方、セイラー&ルーラの方はまさに
タイトル通り「ワイルド・アット・ハート」を
象徴した野性的愛を象徴している。
こう考えて後者のパートを観ると興味深い。

物語の前半、常に炎を映す演出が施されている。
常時タバコの火を強調。
レストランのシーンでは、
ろうそくの火を配置するきめの
細かさが表れている。

しかし、マリエッタの刺客ボビーと
出会ったシーンから、タバコの火は煙になり
画面から火が消えてしまう。
ボビーは真っ赤な車でやってくることから、
「前科者のレッテル」いわば
「過去」が追ってきて、
セイラーは罪意識と戦う様子

克明に描かれているといえる。

 そして、結局警察に負け、
再び刑務所に5年入れられてしまい、
セイラーは「ワイルド・アット・ハート」を
失ってしまう。ルーラは真っ赤な口紅を塗る。
つまり過去に囚われた状態でセイラーに会うが、
もはや二人に「ワイルド・アット・
ハート」の火は灯らない。そういった
絶望状態から、セイラーは真っ赤な車を
乗り越え、過去を乗り越え、
ルーラへの愛を取り戻す。タバコの火ではなく、
プレスリーの「ラヴ・ミー・テンダー」で愛を語り
物語りは終わる。

詰まるところ、
野性的愛から理性的な愛へと
セイラーが変わることで
マリエッタにも勝つ物語だといえよう。

関連記事

“Ç”イーストウッドが叩きつけるイラク戦争「アメリカン・スナイパー」音響編集賞受賞

アカデミー賞賑わすイーストウッド新作「アメリカン・スナイパー」観てきた! 久しぶりにTOH

続きを読む

“Ç”【ネタバレ/続編】「アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅」衣裳コリーン・アトウッド最高傑作しかし…

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅(2016) Alice Through the Looki

続きを読む

“Ç”「劇場版3D あたしンち 情熱のちょ〜超能力♪ 母大暴走!」Amazonプライム・ビデオにて

劇場版3D あたしンち 情熱のちょ〜超能力♪ 母大暴走!(2010) 監督:高橋渉 声の出

続きを読む

深田晃司監督「淵に立つ」の原点「歓待1.1」が怖すぎた件

歓待1.1(2010) 監督:深田晃司 出演:山内健司、 杉野希妃、古舘寛治、 ブライア

続きを読む

“Ç”【ネタバレ&解説】「リップヴァンウィンクルの花嫁」岩井俊二からあれが見られるとは!

リップヴァンウィンクルの花嫁(2016) 監督:岩井俊二 出演:黒木華、綾野剛、Cocco

続きを読む

「白夜と配達人」コンチャロフスキーが送る郵便配達人物語

白夜と郵便配達(2014) Belye nochi pochtalona Alekseya T

続きを読む

“Ç”その男、意識高いにつき「ヒポクラテスの子供達」

フランコフォニー映画祭でアンジェ大ヒット映画「HIPPOCRATE」 先日、アンスティチュフランセ

続きを読む

“Ç”ハンガーゲームの次はコレだ!「メイズ・ランナー」

メイズ・ランナー(THE MAZE RUNNER) 監督:ウェス・ボール 出演:ディラン・オ

続きを読む

『ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命』は『最後のジェダイ』と一緒に観てはいけない件

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命(2017) THE ZOOKEEPER'S WIF

続きを読む

“Ç”ヴェネチア映画祭開幕直前!この作品に注目!ソクーロフ、ソコリモフスキ他

ヴェネチア国際映画祭2015のシーズン到来! 気がつけば夏休みも中盤にさしかかっていますね~

続きを読む

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

【重要なお知らせ】サーバー引っ越しに伴う画像が見えない件

先日、ブログ記事「【悲報】ココマルシアター初回「マイ・ビューティフル・

【自己紹介】チェ・ブンブンってナニジン?

チェ・ブンブンとは? 社会人1年目の映画オタク。 年間500本、映

【毎週インド映画1】『ダンガル きっと、つよくなる』最凶毒親映画

ダンガル きっと、つよくなる(2016) DANGAL(2016)

【男の魂に火をつけろ!企画】お酒映画ベストテン発表

【男の魂に火をつけろ!企画】お酒映画ベストテン発表 定期的にブログサ

【解説】『リズと青い鳥』カイエデュシネマに観て欲しい!幻滅は愛を囀る

リズと青い鳥(2018) 監督:山田尚子 出演:種崎敦美、東山

『タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜』ソン・ガンホの満面の笑みが光州事件で…

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜(2017) 택시운전사(201

『いぬやしき』ブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭は制したが…

いぬやしき(2018) 監督:佐藤信介 出演:木梨憲武、佐藤健

さらに過去の記事

PAGE TOP ↑