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“Ç”【ネタバレ&解釈】「善き人のためのソナタ」シュタージの心情について

“Ç”【ネタバレ&解釈】「善き人のためのソナタ」シュタージの心情について

善き人のためのソナタ(2006)
DAS LEBEN DER ANDEREN(2006)

善き人のためのソナタ
監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:ウルリッヒ・ミューレ、
マルティナ・ゲデックetc

評価:85点

大学の授業で観た。
6年ぐらい前に観たときは、
ナニコレ、つまんな!
と失礼ながら思ったのだが、
それも当然。
中学生、かつ東西冷戦など
知らない人には非常に難しい
映画でした。しかし、巧妙な
ギミックに気づくと
サスペンスとして
一級品の出来。
当時のアカデミー賞外国語賞
を受賞したのも分かる
作品でした。
(当時の対抗馬として、
「パンズ・ラビリンス」、
「アフター・ウェディング」

などがあった)

「善き人のためのソナタ」あらすじ

1984年東西冷戦下の東ドイツ。
国家保安省、通称シュタージで働く
男は作家であるドライマンの監視
業務につく。
少しでも反体制的行動を見つけ出し、
弾圧するのが目的だ。
しかし、次第に男の
心は揺れ動かされ…

「1984年」「華氏451」の新たな翻訳

本作は原作があるわけでも、
実話でもない。
ドナースマルク監督が、0から物語を
構築し東西冷戦の人間を克明に
描写しようとした作品だ。

そして、明らかにジョージ・オーウェル
の「1984年」、レイ・ブラッドベリの
「華氏451」
の翻案という形で
挑戦している。

男はガチガチの社会主義者ではないが、
自分が社会主義者でないことが
バレないように徹底的にシュタージを
演じている。故に、強烈にまで
芸術家を弾圧しようとする。

それが、盗聴をする中で、
「善き人のためのソナタ」
の意味、
「この曲を本気で聴いた者は
悪人ではない…」

を知ったことから
心の中で抑圧されていた
ものを解放したくなってしまう。

そして、シュタージの男は
作家の家に忍び込み、
ブレヒトの本を盗んだり、
作家の妻のメンター
になったりし助けようと
しいつしか危機に陥る。

そのハラハラドキドキ感は
キチンと上記2小説に
寄せていて、面白い。

演じる役は勝手に決められる

本作は「1984年」「華氏451」を
単に東西冷戦に翻訳した作品ではなく、
監督独自の思想が反映されている。

まず、本作を観る上で注記するところは
「演技」である。

シュタージの男が盗んだ
ブレヒトの本は、
演劇に関する本で観客が
芝居に批判的観点を抱くように
「異化効果」を導入すべきだ
と提唱する内容である。

また、作家の妻が
バーでシュタージの男に
「演じる人も勝手に決められる」
と言っており、本作の核ともいえる。

つまり、本作は
東ドイツの抑圧的環境で
自分を守るために偽りの
自分を演じる当時の人々像
を描き出そうとした作品だとわかる。

英雄の不在

「SHOAH-ショア-」の
クロード・ランズマン

「シンドラーのリスト」は
出来事を伝説化していると
批判している。結構、
この手の歴史ドラマは
犠牲的行動をする主人公を
礼賛する傾向があるのだが、
実際現実世界ではそんな
ことはやらないよね。

本作は、英雄は誰も出てこない。
作家を救おうとするシュタージの
男だって、作家を救おう、
女優を救おうというよりも
結構自分の為に救っている
というイメージが強い。

女優も作家も自分の信念の
為に動いているので
他人に尽くそうとはしない。

つまり、冷戦抑圧下で
自己中心的に陥ってしまう
普通の人をしっかり描写している
と言える。

このように、
「善き人のためのソナタ」は
きめ細かい演出によって
冷戦下東ドイツの抑圧的
社会をあぶりだした
傑作と言えよう!

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