“Ç”ワンカット映画の新境地「ヴィクトリア」TIFFにて

ヴィクトリア(VICTORIA)

ヴィクトリア

監督:セバスティアン・ジッパー
出演:ライア・コスタ、フレデリク・ラウ、
フランツ・ロゴフスキetc

評価:95点

本年度ベルリン映画祭で
映画人を震撼させた映画が東京国際映画祭でも
上映された。

なんと2時間20分ワンカットで撮ってしまった
「ヴィクトリア」だ!

ワンカットと言えば、アカデミー賞受賞作
バードマン

」を思い浮かべるが、
あれは映像編集でワンカットにしたってか、
実際にはワンカットではない作品である。

近年の長回し系は、「トゥモロー・ワールド」
の様にCG合成で見せかけの映像を創り出したり、
それこそ「ニーチェの馬」のように
観客を苦しめるアート映画になってたりする。

しかし、観てびっくり!
ヒッチコックの「ロープ」さながらの
娯楽性を維持したまま、ガチで
2時間20分映像切れることなく
女子ヴィクトリアの壮絶な一夜が
描かれていた。

ベルリンで芸術貢献賞を獲ったのも
納得の「ヴィクトリア」を解説していくぞー

「ヴィクトリア」あらすじ

スペインからベルリンにやってきた若い女性
ヴィクトリア。クラブで踊った後、
外へ出るとチンピラに絡まれる。
何故かチンピラについて行ってしまった
彼女は、チンピラの壮絶なミッションに
巻き込まれてしまい…

冒頭、強烈なフラッシュとエレクトロなクラブ
サウンドにヴィクトリアが映し出される。
何故か、帰りたくない模様。
まあ、酒を飲むと家に帰りたくないって気持ちに
なるよね~と思いきや、
何故か彼女はクラブで暴れていて追い出しを食らっている
チンピラの方に歩き始める。
ぜってーあぶねえやん。
タナトスに取り憑かれているようだが何故だ?
と疑問を抱きつつ、ついにチンピラと一杯
付き合うことになる。

彼女は2時間後にカフェを開けなくてはならないのに、
帰りたくないと良い、チンピラと一緒に
店から酒をかっさらう。

早くカフェに行けよと思うのだが、
なかなか行こうとしない。
しまいには、チンピラの一人
ゾンネとラブラブになっているでは
ないか…

そして、チンピラの一人ボクサーの
知り合いから恐ろしいミッションを
言い渡され、彼女はドンドンやばい
方向にジェットコースターの如く
堕ちて堕ちて地獄を味わう。

本当にチンピラとヴィクトリアが馬鹿すぎて、
観ている方は「あぁー!」とすぐにでも
画面の中に入って警告したい気になる。
ってか、演技している感じがなく、
マジでヨーロッパにいそうな人達だなー
と思ったらどうやら、この作品の脚本は12ページだけで
ほぼゲリラ撮影、ほとんど役者のアドリブで
構成されていたのだ。

アドリブとはいっても、
ここまで役者が役に嵌まりきっているのが
ビックリだ。
ヴィクトリア扮すライア・コスタ(可愛い♡)
後半顔面涙でぐしゃぐしゃになりながら
逃げるところなんか迫真でしたねー

そしてアドリブなんだけれど、物語が進むと
チンピラの人生が見えてきて感情移入
し「こいつら良い奴じゃん」と錯覚を
引き起こさせる。ヴィクトリアも
ある挫折を抱えていて現実から
逃げ出したいからあんだけ死を急ごうと
する行動に出ているんだなと分かってくる。

ないような脚本でもしっかりと物語れていた。

ワンカット映画の革命

昔の映画はフィルムで撮られていたので、
10分ぐらいしか長回しで撮れなかった。
そこでヒッチコックはその
テン・ミニッツ・テイクの制約下の中で、
巧みに椅子や壁を使って映像を切り替え、
ワンカットに見える「ロープ」という
作品を作った。

「バードマン」でもCGの技術を使って同じ事を
やっている。

ガチなワンカット映画といえばロシアの巨匠ソクーロフ
がエルミタージュ美術館で撮影した「エルミタージュ幻想」
がある。

ただ、どの作品もはっきり言って狭い空間で物語が進行する。
「部屋」「美術館」「劇場とその周辺」。
しかし、この作品の最大の特徴はとにかく移動しまくることにある。
クラブから、酒屋、アパートの屋上、駐車場、ホテルetcと
2時間20分でよくそこまで移動できるなと思うほど転々とするのだ。
しかも、各場所絶妙なバランスで滞在するからすごい!
ゲリラ撮影とは言え、相当計算しないとこんなバランスの取れた
移動(移動手段としてチャリから車まで使ってるし)は
撮れない。

惜しい点として、カフェでピアノを弾くヴィクトリアの
音楽が後付けの感触がした点。

しかし、これは映画好きなら必見の教科書的作品になるのは間違いなし。
Q&Aなくても拍手が巻き上がったぐらいなので
日本公開恐らくするだろう、凄まじい映画でした。

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