“Ç”これが真の飲み会映画だ!!「まあだだよ」…黒澤明の遺作なり

まあだだよ

まあだだよ

監督:黒澤明
出演:松村達雄、香川京子、井川比佐志
所ジョージ、寺尾聰etc

評価:85点

近年、ハリウッド大作では「飲み会」のシーンが
重要視されている。「バトルシップ」や
エクスペンダブルズ」シリーズ、
アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン
どの作品もキャラクターとの関係性や
楽屋話裏話等、本編で描ききれなかったけれど
スタッフがどうしても描きたい描写が
ここにぶち込まれる。

しかし、世の中には映画の半分くらいを
そんな「飲み会」シーンに充てられた珍作
がある。しかも、それを作ったのが
世界のクロサワだってことをご存じだろうか?

今回紹介するのは、黒澤明の遺作
「まあだだよ」だ!

内田百閒の同窓会ムービーに見せかけて…

これは、法政大学のドイツ語教師にして随筆家の
内田百閒の後生を描いた話である…
と言いたいところだが、物語の半分以上が
同窓会・飲み会シーンで、黒澤明が
死を強烈に意識したクロサワ終活ムービー
になっている。

内田百閒の元に沢山の教え子が訪れ、
馬肉と鹿肉をごちゃ混ぜにした馬鹿鍋を
するところから始まる。
教え子が先生をヨイショしまくり、
懐古しまくる…これはクロサワの
理想かなと思うほど感情的だ。

次に同窓会「摩阿陀会」
シーン、所ジョージを先頭に
教え子が一人ずつ思い出を語り合う。
このシーンが終わるまでに1時間を要するのだ。

その後は、申し訳なさげに内田百閒の
愛猫失踪事件を描き、その後
またしても飲み会…

人の宴会に連れ回されている気分を味わえますw

でも、ココが凄い!

普通、そんなあんまり興味のない人の
飲み会を延々と魅せられたら嫌気がさすだろう。
しかし、不覚にもこの作品…泣けるんです。
まあ、クロサワの遺言と考えると涙が
出てくるのもあるのだが、本当に飲み会のシーン
の描写が細かくて、どんどん心に響いてくる。

松村達雄演じる百聞の優しそうな顔と
ユーモア、一発で「この先生に教わってみたい!」
と思ってしまう。そして、飲み会のシーン。
生徒一人一人が特技や思い出を語る。
生徒の一人が電車の路線の駅名を端から言うシーン。
あまりに駅数が多いので、次の教え子が彼を無視して
ネタを披露する、さらに先生に生徒が集まり
新しい催しが行われる…その間中、
音声編集でずっとかすかに駅名を言う声が
聞こえてくるのだ!なんか、この描写の
細かさで泣けてきた。
丁度「オール・ザット・ジャズ」のラスト、
ボブ・フォッシーが天に召される直前の大団円
Bye Bye Lifeを観ているような心の琴線に
響く映像の作り込みがそこにあった。

ブンブンも憧れの先生のゼミに
入っているので、この映画を観ていると、
こういった同窓会したいなーと思ってしまいました。

黒澤明映画は何故かめっちゃ苦手で、
「デルス・ウザーラ」とか「醜聞」ぐらいしか
肌に合わないのだが、これは今年
ベスト級に泣ける。大好きな作品でしたぞー

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