“Ç”秋葉原無差別殺傷事件の真相「ぼっちゃん」

ぼっちゃん

ぼっちゃん 映画

監督:大森立嗣
出演:水澤紳吾、淵上泰史etc

評価:60点

ぼっちゃん」と聞くと
夏目漱石が放った
親譲りの無鉄砲で小供の頃から損ばかりしている
少年の人生をコミカルに描いたラノベ

の印象を受けるが、この作品はそんな甘い話ではない。

秋葉原から歩行者天国をなくした元凶、
秋葉原無差別殺傷事件をベースに、
孤独でいじめられっ子の青年の心情を
えぐり出すドラマのタイトルである。
監督は「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」「さようなら渓谷
まほろ駅前多田便利軒」等を描いた大森立嗣

寂れた土地で生きる人間の葛藤や哀愁を
撮るのがメチャクチャ上手い
大森監督はどんな世界を魅せてくれるのだろうか?

これはファンタジーである

実録ものだから、ドキュメンタリータッチで
描いているのだろう、ましてやドキュメンタリー
タッチの上手い監督故にそう期待していたら
まんまと裏切られた…良い意味でも悪い意味でも。

主人公の冴えない青年と、その友人が
会社の寮の隣人と戦う様子が非常に
コミカルで、ストーリーの随所に
漫画調のテロップがゴテゴテに装飾されている。
なんか温泉施設や床屋、田舎の民家に置いてある
寂れた実録ものマンガを読んでいるような
作品でした。

だから、ドキュメンタリーっぽい
撮り方なんだけれど中身は映画的で
ファンタジー、園子温の映画に近い
手法だなと感じた。

故に、凄惨な事件の真相を描いている
割に遊びすぎている感じが否めず
リアルタイムでこの事件を観ている
ブンブン、そして「いじめられっ子」の
気持ちが分かるブンブンには、
どうしてもモヤモヤしてしまう。

役者の演技が凄い!

しかし、そのモヤモヤを許容範囲に
とどめてくれたのは、役者の演技が
やたらと上手かったことにある。

今回、実録ものということで
ほとんど無名の役者勢揃い
のキャスティングをしているのだが。

主要3人の演技が神がかっている!!!!
まず、主役の殺傷犯を演じた水澤紳吾の
キモさが凄い。なよなよしている所や、
身体全体からにじみ出る負のオーラ。
これ本物だろ~こういう人いるな~
と思うぐらいにリアルだ。
小心者のくせに、強がるところの
2流感、しょぼさとかまで再現されていて、
観ていて辛くなる(良い意味で)。

んで、そんな彼によりそう男の
宇野祥平の粘着質な感じも
リアル。誰か寄り添う人を
欲していて、特定の人にしか
近づかない。そして主人公同様
コンプレックスの塊。

お手々のシワとシワを合わせて
”不”幸せナームー。

巨大な負のベールが観客を襲いますw

そんな彼等の前に現れた
敵のヤンキーを演じる淵上泰史
も上手い。

観ていて怖くなる。
DQN感。いじめの陰湿かつ
中学生か!と思うやり方に
背筋が凍る。

結局…

なんだか、まあ、実際に起きた話を
映画化しているわけだが、
どうも監督は昔イジメられっ子
だったんじゃないかな~
と思った。

んで、いやーな感じに
復讐をする。
よく映画の復讐劇ってど派手に
銃とかナイフで敵をぶっ殺すが、
実は復讐はそんな華麗なもの
じゃないと、俺の復讐はコレだ
と言わんとしているんじゃないかなー
あくまで憶測だけれど。

実話をファンタジーチックに描くとしたら、
もっと「愛のむきだし」や「地獄でなぜ悪い
のように誇張しまくる必要があり、
実録ものとして描くならもっと
サウンドトラックを減らし、
リアリティを上げる必要があった。

役者の使い方は上手いが、
どうも中途半端な作品だったと言えよう。


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