“Ç”暑苦しい檀一雄の半生「火宅の人」

火宅の人


監督:深作欣二
出演:緒形拳、いしだあゆみ、原田美枝子etc

学校の授業で、深作欣二の
「火宅の人」を観た。
文学ゼミに入っているのに
結構、文芸邦画苦手なんだよね~
昔の暑苦しい感じが伝わってくる
っていうかね~

ってことで、久しぶりに文芸ものへの挑戦です!

堂々たるモテ男:桂一雄

近年、草食系男子が増えており、
モテキ」のように複数の女性に
声を掛けられただけで、
発情するものの自信のなさから
行動が不器用になってしまう様子が映画で描かれたりする。

しかし、今回観た「火宅の人」は
堂々たる不甲斐ない行為を
敢行しているにも関わらず、
長く女と結ばれる恐ろしい男が主人公である。

あらすじ

unnamed (54)

妻子を持ち、重病の子含め
5人の子を養う筈の男・
桂一雄。にも関わらず、
劇団の女優に惚れ込んでしまい、
不倫生活を始めると思いきや、
妻に気づかれても堂々と
不倫生活を満喫している。

奥さんは、一度は一雄のもとを去るが、
何故か戻ってくる。
何故、妻は別れなかったのかと考えると、
母性愛にたどり着く。
夫は、自堕落で子育ても
できないような男。

しかし、折角自分が生んだ
5人の子を夫に託して去る訳にもいかない。
こういう母性愛があったからこそ
戻ってきたのではないだろうか。
現に、戻ってきた際妻は一雄に
夫としては認めないと
言い放っていることから、
自分よりも子どもを大切している
ことが分かる。
マッドマックス/怒りのデス・ロード」や
百円の恋」など、
近年の映画は上下社会に抑圧された女性が、
新天地を目ざして覚醒し自由を
獲得していく作品が増えているが、
「火宅の人」では女性があえて
抑圧の道へと舞い戻ってくる点、
時代の変化が見受けられた。

不道徳なやつにコンプレックス描写必要なり

さて、そんな不道徳な生活を
する桂一雄。個人的に、
愛に苦悩するシーンを
強く表現する描写が必要だったと
感じた。全体的に、
本能があるがままに
不倫や愚行を繰り返す桂一雄、
そんな一雄にだっていくらか
罪悪感を抱く瞬間が存在するはずである。

女とドラッグと金に溺れた証券マンを描いた
ウルフ・オブ・ウォールストリート」でも、
やはり序盤で顧客をだます
手法に躊躇するシーンが登場する。
いつから、邪悪な精神もかつては
清き時代があったことを表現することで、
物語にメリハリがつく。
ただ、主人公の不貞ライフを綴ったのでは
物語が失速してしまう。

この作品の場合、
冒頭にエディプスコンプレックスを
思わせるシーンを描いていたのに、
桂一雄の一生とリンクしていないように見えた。
確かに、呑み屋で一雄が息子に
「俺を超えてみろ」というような台詞を放ち、
エディプスコンプレックス描写を演出してはいるが、
力不足に思えた。

ここで冒頭のシーンを、
一雄目線で5~10分程度の挿話を入れることで、
一雄の哲学が分かりやすいものになることであろう。
どうしても、夜の営み(時に昼の営みと言えよう)までの過程を、
いくつか用意し、物語のはめ込んでいくだけの
手法とセピアや青、ピンクを駆使した強烈な
色彩描写だけでは竜頭蛇尾に陥ってしまう。
折角の、深作欣二と木村大作による
文芸ものに似使わないドキュメンタリータッチ
でまさにタイトルの暑苦しさをも
ストーリーににじませ、
見事に原作者・檀一雄の世界観を再現しているだけに残念だ。
「火宅の人」予告編

関連項目

「マッドマックス/怒りのデス・ロード」レビュー

「百円の恋」レビュー


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です