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“Ç”エクストリーム中絶「4ヶ月、3週と2日」

“Ç”エクストリーム中絶「4ヶ月、3週と2日」

4ヶ月、3週と2日(4 luni, 3 saptamâni si 2 zile)


監督:クリスチャン・ムンジウ
出演:アナマリア・マリンカ、タニア・ポッパetc

2007年、カンヌ映画祭はルーマニア映画
「4ヶ月、3週と2日」が、
ソクーロフの「チェチェンへ アレクサンドラの旅」、
イ・チャンドン「シークレット・サンシャイン」等
数々の強豪を出し抜き見事パルムドールを受賞した。

ルーマニアの凄惨な黒歴史を解説抜きに切り出した作品だが、
パルムドールの他に全米映画批評家協会賞、
ヨーロッパ映画賞等数々受賞したことから
クリスチャン・ムンジウ監督のメッセージはきちんと伝わったことであろう。
 

観察映画

この作品は、全編通して時代背景が全く語られない。
前半1/3は主人公の少女オティリアがせわしなく動き回る。
しかも何かに怯えながら。
ブレたカメラワーク、
趣旨がなかなか見えてこないドキュメンタリータッチの
作風に苛立ちを覚えてくる。
そして、オティリアが友達の中絶手術実行の為に
駆け回っていたことを知ったとき、
第一の謎が解ける。

何故、彼女たちは避妊しないのか?

しかし、新たな疑問が浮上する。
何故、彼女はそこまで面倒なことをして中絶手術をするのか?と。
映画では語られないため、資料に目を通すと、
これはチャウシェスク独裁政権時代の話だと分かる。

人口増加制作のため、避妊・中絶を禁止していたのだ。
当然ながら学校でもまともな性教育を受けていないため、
身体を洗い避妊としようとしたり、妊娠4ヶ月も経ってから
中絶をしようとしたりするのだ。

特に当の中絶するガビツァは、
中絶を深刻なものと考えておらず、
ホテルの手配も怠り、資金も集めようとしていないのだ。
そして、相方のオティリアも中絶手術がどれだけ危険で
入念な準備が必要かを分かっておらず、
ガビツァの性格を考え先手を打つことをしていない。
また何故ガビツァは妊娠したのかと考えた時、
そもそもセックスをすると子どもができる恐れがあること
を知らなかったのではと憶測がつく。
つまり時代背景を知る者が観ると、
あまりにも「無知」さに恐怖すら覚える内容となっているのだ。

効果覿面なカメラワーク

そうと分かると、ドキュメンタリータッチのカメラワークが
いかに強力な効果を持っているのかも説明できる。
劇中では、警察に追われるといった描写はない。
反対に暗闇で、全く見えない画面。
しかし、オティリアが走る音、後ろに移る見知らぬ人の影を
ブレブレのカメラワークで映し出すことにより、
ヨーロッパの夜道を歩いたことがある人なら分かる
襲われるか否かの恐怖が形成された。

またリアリズムを追求しているため、
最初のホテルにおいて、ホテル員のミスで
部屋が予約されてなかったのに、
ホテル員に追い返される絶望を描く。
そして、二番目のホテルでは、
本当にオティリアは部屋を確保できるのか
といった不安を観客に抱かせることができる。

「4ヶ月、3週と2日」が傑作になったわけ、
それはドキュメンタリーにはしなかったことだ。
ドキュメンタリーとして撮ったら、
観客はドキュメンタリーとして一歩身を引いて観てしまうであろう。
それをドキュメンタリータッチにすることで、
観客を当事者と同じ位置に放り込むことが出来、
観客にも緊迫を感じやすくしたと言えよう。
「4ヶ月、3週と2日」予告編

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